InDesign CS5.5では、EPUB関連の機能が強化されています。プログラムも新しく書き直されたことで、CS5までのEPUB書き出しとはまったく別物として生まれ変わったといえるでしょう。多くの機能強化がなされていますが、まずはアンカー付きオブジェクトの機能強化について解説したいと思います。
まず、基本として覚えておきたいのが、InDesignからEPUB書き出しを実行すると、テキストや画像といった各オブジェクトがどのようにEPUBに書き出されるかということです。
結論から言ってしまうと、各オブジェクトは、その座標値により書き出される順番が決まります。例えば、下図のようなドキュメントがあったとします。
このドキュメント(左開き)からEPUBを書き出すと、各オブジェクトは以下のような順番で書き出されます。
1 タイトル
2 本文(連結されたテキストすべて)
3 Photo A
4 キャプションA
5 リード
6 Photo B
7 キャプションB
これは、左開きのドキュメントでは、オブジェクトの座標値が左にあるものから順に書き出されるためです。そのため、InDesign CS5まではEPUBに書き出されるオブジェクトの順番をコントロールするために、あらかじめオブジェクトの座標値を変更しておく必要があったわけです。
なお、左開きのドキュメントと右開きのドキュメントでは、オブジェクトの書き出される順番は、それぞれ下図のようになります。
※[EPUB書き出しオプション]ダイアログで[XML構造と同じ]と同じを選択している場合は、この限りではありません。
InDesign CS5.5では、EPUBに書き出されるオブジェクトの順番をコントロールするための機能が2つ搭載されました。1つが今回ご紹介するアンカー付きオブジェクトの機能です(もう1つは[アーティクル]パネルの機能で、次回の記事で解説する予定です)。
この機能を使用することで、レイアウトを変更することなく、EPUBに書き出されるオブジェクトの順番をコントロールできます。例えば、下図の場合、画像とキャプションは、連結された本文テキストがすべて書き出された後にEPUBに書き出されます。しかし、画像とキャプションは、目的のテキストの間〈赤いラインの位置〉に挿入した形でEPUBに書き出したいケースも多いでしょう。アンカー付きオブジェクトの機能を使ってやってみましょう。手順は非常に簡単です。
まず、テキスト間に挿入したいオブジェクトを選択ツールで選択します(今回は、画像とキャプションを目的のテキスト間〈赤いラインの位置〉に挿入したいので、あらかじめグループ化しておきます)。オブジェクトを選択すると、フレームの右上に青い四角形が表示されます(下図)。
この青い四角形をつかんで、目的のテキスト間にドラッグすればOKです(下図)。
[表示]メニューの[エクストラ]から[テキスト連結を表示]を実行すると、オブジェクトがアンカー付けされていることを表すアンカー(錨のアイコン)が表示されているはずです(下図)。
これで終わりです。レイアウトを変更することなく、目的のテキスト間に画像やテキストが挿入された状態でEPUBファイルの書き出しが可能になります。ただし、注意してほしいのが画像に回り込みを設定している場合です。アンカー付けすることで、回り込みされるテキストの状態が変わる場合がありますので注意しましょう(下図参照)。
もう1つの利点として覚えておいてほしいのが、パスオブジェクトをアンカー付きオブジェクトとして挿入すると、EPUBに画像として書き出せるようになることです。InDesign CS5までは、パスオブジェクトはEPUBに書き出せませんでしたが、InDesign CS5.5では可能になりました。ラインや図形といったパスオブジェクトも、アンカー付きオブジェクトにするか、次回解説予定の[アーティクル]パネルを利用すればEPUBに書き出せます。
今回、アンカー付きオブジェクトの機能をご紹介しましたが、もちろんこの機能は印刷用途でも使用可能です。これまでよりも、グッと使いやすくなっていますので、ぜひ活用してください。
なお、アドビシステムズのサイト内でもInDesign CS5.5から書き出すEPUBについての連載をさせていただいております。「第1回/InDesign CS5.5登場!」の記事内でも、アンカー付きオブジェクトの機能を取り上げていますので、良かったらこちらも参照してください。アドビの連載記事では、サンプルファイルのダウンロードもできるようになっています。