InDesignではバージョンCS3からEPUBの書き出しが可能でしたが、これはリフロー型といわれるタイプのEPUBでした。InDesign CC 2014からは、固定レイアウト(フィックス型)のEPUBの書き出しも可能になりました。
では、下図のようなドキュメントから固定レイアウトのEPUBを書き出してみましょう。
まず、[ファイル]メニューから[書き出し]を選択します(下図)。
[書き出し]ダイアログが表示されるので、[形式]に[EPUB(固定レイアウト)]を選択して[保存]ボタンをクリックします(下図)。
[EPUBの書き出し(固定レイアウト)]ダイアログが表示されるので、目的の応じて各項目を設定していきます。
[一般]カテゴリーでは、EPUBに書き出すページ範囲や、カバー、目次を設定します(下図)。
[変換設定]カテゴリーでは、書き出す画像の形式や解像度等を設定します(下図)。
[CSS]カテゴリーでは、書き出すEPUBに任意のCSSファイルを追加することが可能です(下図)。
[JavaScript]カテゴリーでは、書き出すEPUBに任意のJavaScriptを追加することが可能です(下図)。
[メタデータ]カテゴリーでは、メタデータを指定します。[識別子]はInDesignが自動的に指定してくれますが、他の項目は目的に応じて入力してする必要があります(下図)。
[アプリケーションを表示]カテゴリーでは、書き出されたEPUBを表示するビューワーを指定しておくことが可能です(下図)。
各項目を設定し[保存]ボタンをクリックすると、EPUBが書き出され、指定したビューワーで表示されます。下図は、Adobe Digital Editions 4.0で表示させた状態ですが、きちんとレイアウトを保ったままEPUBに書き出されているのがわかります(下図)。
なお、書き出されたEPUBは、文字属性を持ったまま変換されますが、縦組みのテキストには注意が必要です。[自動縦中横設定]や[縦組み中の欧文回転]を適用している部分は、テキストが抜け落ちたり、回転が解除されます。下図左側がInDesignドキュメントの表示、右側がAdobe Digital Editions 4.0での表示です。縦組みテキストに関しては、今後のアップデートに期待したいところです。
その他の機能アップ
[オブジェクト書き出しオプション]ダイアログに[EPUB:形式]という項目が追加され、IDPFによって定義された辞書の文字列をポップアップメニューから指定可能になりました(下図)。
[EPUB:形式]とは、[epub:type]と記述される属性で、それぞれのオブジェクトの意味をより的確に伝えるためのものです。"cover"や"toc"など、さまざまなものが用意されています。
また、これまでの[サイズ]の項目は、[CSSの幅のカスタム設定]と[CSSの高さのカスタム設定]に生まれ変わり、選択したオブジェクトの幅や高さに合わせて、より高度にCSSの生成をコントロールできるようになりました。
さらに、オブジェクトスタイルおよびオーバーライドされた属性の「線の種類、太さ、色、角オプション、塗り」についてCSSプロパティがサポートされていたり、空のオブジェクトが削除されなくなっていたり、またラスタライズされたオブジェクトのハイパーリンクが消えなくなるなど、いくつかの問題も改善されています。
さらに、言語のマークアップにlang属性が追加されるようになりました。段落スタイル内の[詳細文字形式]の[言語]の項目の設定が反映されます。
なお、複数の[言語]が混在している場合は、もっとも多く使用されている言語が優先されます。 また、OpenType機能属性がCSSの"font-feature-settings"プロパティにマッピングされるようになりました(下図)。
表のEPUBへの再現性も大きく向上しています。セルの線が"border-style"、"border-color"、"border-width"にマップされ、セル内の縦組みが"vertical-align"にマップされるようになりました。また、表スタイルに関するCSSの記述が適正化され、表スタイル内のセルスタイルやセル属性のオーバーライドも反映されます(下図)。
EPUBファイルを書き出す前にプレビューできるようになりました。
[ウィンドウ]メニューから[インタラクティブ]→[EPUBインタラクティビティプレビュー]を選択します(下図)。
すると[EPUBインタラクティビティプレビュー]ダイアログが表示され、固定レイアウトのEPUBの状態を確認できます(下図)。
他にも、以下のような機能の向上がなされています。
- スライドショー、アニメーション、トリガーボタンといったインタラクティブ機能をEPUB(固定レイアウト)に追加可能になりました。
- ハイパーリンクと相互参照がサポートされ、ナビゲーションが改善されました。
- ブックのCSSをドキュメントごとに生成し、リフロー可能な固定レイアウトEPUBに書き出す
- EPUBおよびHTMLの幅/高さの制御機能がオブジェクトスタイルにも追加されました。
- スプライン内のスプライン(オブジェクト内への貼り付け)が、EPUB(固定レイアウト)およびEPUB(リフロー型)でサポートされるようになりました。
- 合成フォント、割注テキストがEPUB(固定レイアウト)でサポートされるようになりました。