2011年5月20日にAdobe Creative Suite 5.5が発売され、InDesignもCS5.5にバージョンアップしました。今回のバージョンアップでは、基本的に印刷関連の機能は変わっておらず、大きく以下の2点の機能が追加されています。
※印刷関連の機能がまったく変わっていないというわけではありません。
●1つめは、EPUB書き出しの機能強化です。C++でプログラムが書き直され、さらにいくつかの機能が新しく追加されたことで、まったく新しいツールへと生まれ変わっています。EPUB書き出しに関しては、今後、詳しく解説していきたいと思いますが、Adobeのサイト内(http://www.adobe.com/jp/joc/design/guide.html)でも連載をさせていただく予定です。
●2つめは、Adobe Labsでベータ版が公開されていた(現在、公開は終了しました)、デジタルマガジン用のソリューションであるAdobe Digital Publishing Suite(以下、ADPS)の制作に関する機能がInDesignに取り込まれました。ベータ版では、InDesignに機能拡張ファイルをインストールし、さらに2つのエアーアプリ「Adobe Interactive Overlay Creator」と「Adobe Digital Content Bundler」を使用して作業を行いましたが、2つのエアーアプリの機能はInDesignのパネルとして取り込まれました。今回は、ADPSがどのように変わったのかを中心に解説していきたいと思います。
まず、ADPSに関する機能を利用するためには、アプリケーションをインストールしただけではダメで、『Folio Producer tools for InDesign』をAdobeのサイトからダウンロードしてインストールする必要があります。なお、勘違いしやすいですが、ADPSを使用したいのであればCS5のままでも可能です。実は、『Folio Producer tools for InDesign』はCS5用にも提供されており、CS5.5と同様、ADPSの機能を利用できます。別の言い方をすれば、CS5.5とCS5の違いは、EPUB書き出しの機能のみとも言えます(正確には、他にも違う点はありますが……)。
まず、以下のURLから『Folio Producer tools for InDesign』をダウンロードしてインストールします。
なお、InDesign CS5の場合には、最新の7.0.4になっていることを確認してからインストールしてください。
(InDesign CS5.5 Mac版)
http://www.adobe.com/support/downloads/detail.jsp?ftpID=5019
(InDesign CS5.5 Windows版)
http://www.adobe.com/support/downloads/detail.jsp?ftpID=5020
(InDesign CS5 Mac版)
http://www.adobe.com/support/downloads/detail.jsp?ftpID=5017
(InDesign CS5 Windows版)
http://www.adobe.com/support/downloads/detail.jsp?ftpID=5018
『Folio Producer tools for InDesign』をインストールすると、CS5.5の[Overlay Creator]パネルと[Folio Builder]パネルの表示が下図のようにアップデートされます。なお、CS5では新たにこれらのパネルが追加されます。
※これらのパネルは[ウィンドウ]メニューの[エクステンション]から表示させることができます。
[Overlay Creator]パネル
[Folio Builder]パネル
[Overlay Creator]パネルと[Folio Builder]パネルがInDesignに搭載されたことで、ベータ版の時に比べて作業もかなり楽になります。これまで、インタラクティブな要素は「Interactive Overlay Creator」を使用してSWFファイルを書き出し、それをInDesignドキュメントに配置するという流れでした。今後は、ムービーやパノラマ等のインタラクティブな素材は、直接InDesignに配置すればよいので、作業の手間が軽減されるのはもちろん、複雑なファイル構造のルールからも開放されます。ちなみに、ファイル名等に関しても特に制限はなくなりましたが、縦用のドキュメントの末尾に「_v」、横用のドキュメントの末尾には「_h」を使用する必要があるというルールは変わっていません。
※ベータ版の時の作成方法に関しては、「No.24 Adobe Digital Publishing Suite その1」〜「No.28 Adobe Digital Publishing Suite その5」を参照してください。
インタラクティブな機能に関しては、ベータ版の時と名前が変わっているものがいくつかあります。
「360 Viewer」は「画像シーケンス」
「Image Pan」は「パンとズーム」
「Web View」は「Webコンテンツ」等です。
また、日本語用のベータ版では使用できなかった新しい機能「スクロール可能フレーム」も追加されています。
なお、詳細な使用方法に関しては、ADOBE DIGIPUB MAGAZINEサイト内の「Adobe Digital Publishing Suiteマニュアル」を参照していただくとして、ベータ版と比べてもっとも異なる点は、ローカルに.folioファイル(ベータ版の時は.issueファイル)が作成できなくなったことです。つまり、作成した.folioファイルは基本的にやり取りができないということです。
次回は、InDesignドキュメントから.folioファイルを作成して、iPad等で確認するまでの手順を解説します。