InDesignでは、Study Room CS4 No.23でも記述したように、ePub形式のファイルが書き出せるわけですが、作成したドキュメントの体裁を完全に保ったまま書き出せるわけではありません。
縦組みのまま書き出せるわけではありませんし、段落先頭の全角スペースやルビ、段落境界線等も削除されてしまいました。また、Adobe Digital Editionsで開くと、下図のように文字化けしているテキストもありました。
※縦書きテキストがePubに書き出せないというわけではなく、縦書きで表示できないという意味です。
では、なぜ文字化けするテキストとしないテキストがあるのかを色々と検証してみました。
※ちなみに、文字化けしているからといって文字情報がなくなってしまったわけではありません。ePubファイル内のxhtmlファイルを直接ブラウザ等で開くと、テキストはちゃんと表示されます(ePubファイルを解凍する方法は、Study Room CS4 No.23を参照してください)。
まず、ePubに書き出す際には[Digital Editions書き出しオプション]ダイアログの[一般]で、[埋め込みフォントを含む]がオンになっている必要があります(下図参照)。
では、[埋め込みフォントを含む]がオンになっていればOKかというと、そうではなく、以下のような結果になりました。
- 段落スタイルを適用していない和文テキストは文字化けする([基本段落]が適用されいてもダメ)
- 段落スタイルが適用されていても、オーバーライドされて、スタイル内で指定されているフォントと異なるフォントが適用されている場合には、段落スタイルで指定されているフォントが適用される
ePubファイル内のcssファイルを見てみると分かりますが、段落スタイルの内容がcssとして書き出されてテキストに反映されているため、InDesignから書き出す場合には、段落スタイルが適用さている必要があるのではないかと推測します(下図はePub内のcssファイルの一部)。
では、段落スタイルが適用されていれば必ずテキストが表示されるのかというと、実はそうではなく使用しているフォントによって結果が異なります。
上図を見てください。InDesignドキュメント上で、上から「小塚明朝ProN」「ヒラギノ明朝ProN」「A-OTF リュウミンPro6N」「FOT-マティスProN」を適用したものをePub形式に書き出したものです。もちろん、すべてのテキストに段落スタイルを適用しています。「ヒラギノ明朝ProN」だけ文字化けしているのが分かります。
ePubファイルの中身の「Fonts」フォルダを見てみると、使用しているフォントがコピーされているのが分かるのですが、「ヒラギノ明朝ProN」だけファイル名が文字化けしているのが分かります(上図)。推測ですが、フォント名が日本語の場合、ePubファイルとしてコピーされる際にファイル名が文字化けしてしまい、これが原因となってテキストも文字化けしているのではないかと推測します。
では、段落スタイルが適用されていて、使用しているフォントのフォント名に日本語が使用されていなければOKかというと、それだけではないようです。
上図は段落スタイル名に使用している名前を変更したドキュメントからePubファイルを書き出したものです。
※下図のように段落スタイル名を変更しています。
ePubファイル内のcssファイルを開いてみると分かりますが、段落スタイル名が日本語だけだったために、css内のスタイル名がすべて同じ1つのスタイルとして反映されているのが分かります(下図参照)。
ちなみに、InDesign上の段落スタイル名に欧文が使用されていると、下図のように欧文のみがcssのスタイル名として認識されているのが分かります。
※キャプチャは一部、切れています。
InDesignからePubファイルを書き出す際には、テキストには必ず段落スタイルを適用し、さらにスタイル名には日本語を使用しない方が良さそうです。
また、使用フォントですが、日本名を使用していないフォントなら何でもよいかというと、そうではありません。ePubファイル内にフォントを埋め込む場合には、ファイルサイズやライセンスの問題もからんでくるため、なかなかやっかいです。ちなみにiPadでは、日本語用に「ヒラギノ角ゴ ProN」と「ヒラギノ明朝 ProN」が使用できるようです。
http://www.macotakara.jp/blog/index.php?ID=6564
※なお、内容に誤りがありましたらお知らせいただけると助かります。
私自身、まだまだePub形式をよく分かっていないので……