InDesignには、[ファイル]メニューに[Digital Editions用に書き出し]というコマンドが用意されています(下図参照)。
このコマンドはInDesign CS3の時に追加されたコマンドですが、実はこれまで一度も使用したことがありませんでした。
しかし、(日本時間)2010年1月28日にAppleからiPadが発表されたことで、今回このコマンドを試してみました。
このコマンドは、いわゆる電子ブック(eBook)用の公開規格であるePub形式のファイルを書き出すためのコマンドです。International Digital Publishing Forumという所が規格を決めており、iPadでもサポートが表明されています。また、Sonyのオンラインブックストア「eBook Store」で配信する電子書籍のファイル形式も年内にePubに完全移行すると発表されています。
※2010年1月現在、Amazon.comの「Kindle Store」ではazwという独自形式が採用されています。
では、実際にInDesignから書き出してみたいと思います。
[Digital Editions用に書き出し]コマンドを実行すると、 [別名で保存]ダイアログが表示されるので、[名前]と[場所]を指定します(下図参照)。拡張子は「epub」となっています。
[保存]ボタンをクリックすると、[Digital Editions書き出しオプション]ダイアログが表示されます(下図参照)。
[一般][画像][目次]の各項目を設定して[書き出し]ボタンをクリックすると、指定した場所にepub形式のファイルが書き出されます(下図参照)。なお、各項目の詳細はヘルプを参照してください。
http://help.adobe.com/ja_JP/InDesign/6.0/WS032BF3B3-6DF2-4544-9017-3AD3160F6C65a.html
では、このファイルを開いて見てみましょう。このファイルを開くには、epub形式に対応したビューワーが必要です。ここでは、Adobe Digital Editionsを使用して開いてみます。
なお、Adobe Digital Editionsは以下の場所から無償でダウンロードしてインストールすることが可能です。
http://www.adobe.com/products/digitaleditions/
上図がAdobe Digital Editionsで開いてみたものです。[InDesignの目次を含む]をオンにして書き出したので、きちんと目次も書き出されています。なお、この図ではすべての日本語テキストがきちんと表示されていますが、実は文字化けしているテキストも所々ありました。どのような場合に文字化けするかに関しては、検証して次回以降に掲載したいと思いますが、まず、ePub形式がどういったものかを理解したいと思います。
横浜工文社様が解説している「日本語Epubブックサンプル」ページが分かりやすいですが、それによると、
- 一定の約束のもとに構成ファイルをZIPファイルにまとめたもの(ただし拡張子は.epub)。
- ファイル一覧や目次などXML形式のメタファイルを持つ。
- コンテンツはXHTML(サブセット)、CSS、PNG、JPEGなど、Web標準に準拠。
- 最大の特徴は、PDFとは異なり固定のページ境界がなく、画面やフォントの大きさに応じて、表示のたびにページ境界が変動する。
ということだそうです。
試しに、書き出したePubファイルの拡張子をzipに変更し、解凍してみると、下図のようなファイル構成となっていました。
「mime.type」というファイルと「META-INF」「OEBPS」という2つのフォルダからなっています。
また「META-INF」フォルダには、
「container.xml」「encryption.xml」という2つのxmlファイル、
「OEBPS」フォルダには、
「content.opf」「template.css」「toc.ncx」「○○○○○.xhtml」というファイルと、「Fonts」「images」というフォルダからなっていました。
ちなみに、「○○○○○.xhtml」をブラウザで開いたものが上図、「template.css」を開いたものが下図になります。
これらを見ると分かりますが、ePubはWebページと同様に(X)HTMLやCSSの仕組みになっており、これらの知識があればePubファイルを作成したり、見せ方をコントロールすることができそうです。
次回以降に、InDesignからのePubファイルの書き出しについて色々と検証してみたいと思います。