フレームグリッドを使用して文字組みを行う場合、[フレームグリッド設定]で設定した級数より大きなサイズを指定すると、下図のように見出し部分が2行取りになります。これは[グリッド揃え]が「中央」になっているからです(図は12Q・20Hのフレームグリッドで、見出し部分のみ16Qに設定し、行送りは「自動」にしてあります)。
しかし[グリッド揃え]を「中央」以外のものに変更すると下図のように見出し部分も1行のままです。
上図は[グリッド揃え]を「仮想ボディの上」にしたものです。見出しの上辺が仮想ボディの上に揃っています。
上図は[グリッド揃え]を「仮想ボディの下」にしたものです。見出しの下辺が仮想ボディの下に揃っています。
では、[グリッド揃え]を「仮想ボディの上」や「仮想ボディの下」等にした時は、2行取りにならないのでしょうか。そうではありません。上と下の図を見比べて下さい、20Qまでは1行のままですが、20Qより文字サイズが大きくなると2行取りになってしまいます。
では、文字サイズがどれぐらいの大きさになると、2行取りになるのでしょうか。これは実は「行送り」の設定が関係しているのです。「行送り」の値が「フレームグリッドの行送り」の値を超えると2行取りになるのです。
※サンプルでは「行送り」を「自動」にしていますが、「自動」の場合、行送りは[ジャスティフィケーション]の「自動行送り」の値が参照されるということを覚えておいて下さい(下図)。
現在、「自動行送り」は「100%」に設定されていますが、これを下図のように「80%」に変更するとどうなるでしょうか。
すると、見出しは25Qまでは1行に収まり、25Qより大きくすると2行取りになりました(上・下図参照)。
つまり見出しの行送りは、「25Q×80%=20」となり、(このフレームグリッドの行送りは20Hなので)25Qまでは1行になるわけです。
上と下の「行送り」の値を見て下さい。下図では、行送りが(20.08H)となるため、20Hのフレームグリッドに収まらず、2行取りになるというわけです。
では、[グリッド揃え]に「中央」を使用して、見出し部分を1行取りにできるのでしょうか。下図は見出しを20Qに設定し、[ジャスティフィケーション]の「自動行送り」を「70%」に設定したものです。
一見1行取りになっているようですが、実は違います。結論からいいますと、[グリッド揃え]が「中央」の場合は、1行取りになりません。これは、[グリッド揃え]が「中央」の場合には「テキストの仮想ボディ」と「グリッドの仮想ボディ」を比較してテキストを配置する仕様になっているためで、行送り値は関係ないからです。上図もよく見ると見出し部分は2行取り中央になっており、その次の行(「かきくけこ」の文字)が1行上に配置されているのがわかります。
では、どういった場合にこのような現象が起こるのかを説明する前に、まず以下の「行取りとフレームグリッド」についてをご覧下さい。
行取りとフレームグリッド
「行取り」という機能は、[グリッド揃え]の機能によって実現しています。従来のDTPソフトでは、「ベースライングリッド」によって各行の上下の配置位置が決められていますが、InDesignのフレームグリッドは、従来のDTPソフトが持つ「ベースライングリッド」とは違います。
基準点は「線」ではなく「面」なので、一次元ではなく二次元で扱うことができるわけです。グリッド自体がメトリクスを持っており、欧文ベースライン以外にも、仮想ボディの上、下、中央などの情報もフレームグリッドが持っています。ですから、[グリッド揃え]を「中央」に設定すると、行の仮想ボディの中央がフレームグリッドの「中央基準点」に揃います。
※中央基準点:升目の中央および行間の中央(中央基準点は行間の中央にもあります)
上図の赤と青の線がフレームグリッドの「中央基準点」になります。青色の線は、それぞれの行の中央が揃っている「中央基準点」で、赤色の線は、行の高さが高すぎるためピッタリ合わせられない基準点です。つまり級数(行の高さ)が大きくなっていくと、揃えることのできる「中央基準点」がどんどん下がっていって、行取りが増えていくのです。
では、どういった場合に[グリッド揃え]が「中央」で、下図のように見出しの次の行が1行上に配置されるのでしょうか。まず、InDesignは「ワードプロセッシング」だということを思い出して下さい(詳細はStudy Room 1.0J No.41参照)。図の場合だと「A」の値が参照されるということです。
この時、見出しの「行送り」は[ジャスティフィケーション]の「自動行送り」が「70%」ですから、
20Q×70%=14H(3.5mm)ということになります。
また、見出しは2行取りの中央に位置しており、行間は2mmですので、「A」の値は、2mm+(5−2)/2mm=3.5mmとなり、「行送り」の14H(3.5mm)と同じになります。
では、見出しの級数を20.1Qにするとどうでしょう。実際に試してみるとわかりますが、
「行送り」は、20.1Q×70%=14.07H(3.5175mm)
「A」は、2mm+(5.025−2)/2mm=3.5125mmとなり
「行送り」は「A」の値より大きくなってしまうため、「かきくけこ」の行は次の行の「中央基準点」に揃うことになり、1行下に移動するのです。