CS6では、新しく[代替(だいたい)レイアウト]という機能が搭載されました。代替レイアウトは、1つのドキュメント内に複数のレイアウトを作成できる機能です。例えば、iPad用に作成した縦置きレイアウトから、横置きのレイアウトを作成するといった場合に有効です。別ドキュメントとして作成するのではなく、リキッドレイアウト等の機能を使って代替レイアウトを作成すると、オブジェクトの位置やサイズ変更をある程度、自動で行えたり、テキストや画像等のオブジェクトを共通して管理できるといったメリットがあります。
代替レイアウトは、一般的にはAdobe Digital Publishig Suite(.folio)等のデジタルマガジンのソリューションでしか活用できないような気もしますが、A4リーフレットのレイアウトを基に、B2のポスター用データを作成したり、表紙のデザイン案を複数作成するような場合にも、有効な機能です。
ここでは、表紙のデザイン案を複数作成するケースを想定して解説していきます。
例として、下図のようなA4の表紙デザインを用意しました。
まず、[ページ]パネルを見てみましょう。マスター領域とドキュメント領域の境界の所に、代替レイアウト用の名前が表示されるようになっています(下図赤枠部分)。
※代替レイアウトを使用しないのであれば、[ページ]パネルのパネルメニューから[ページの表示]の[横方向]または[縦方向]を選択して、名前を非表示にできます。
この名前はクリックすることで変更できるので、「A4 縦」から「design1」に変更しました(下図)。
今度は、[段落スタイル]パネルを見てみます。3つの段落スタイルが作成されています(下図)。
では、代替レイアウトを作成してみましょう。3つの方法があります(下図)。
[代替レイアウトを作成]を実行すると、[代替レイアウトを作成]ダイアログが表示されるので、[名前]を入力して[ページサイズ]を設定します。異なる方向やサイズのドキュメントを作成できますが、ここでは同じ方向やサイズとしました(下図)。
なお、ポイントとなるのは、[オプション]の項目です。デフォルトでは3つの項目ともオンになっていますが、これらをオンにしておくことで、テキストや画像をリンクとして代替レイアウトに反映できるだけでなく、スタイル等も新しいスタイルグループとしてコピーできます。ここでは、このまま[OK]ボタンをクリックします。
指定したサイズで代替レイアウトが作成されます。[ページ]パネルは下図のようになり、マスターページもコピーされているのが分かります。
まずは[段落スタイル]パネルを見てみましょう。「design1」と「design2」のレイアウトがグループ名となり、同じスタイルがコピーされています(下図)。
今度は[ページ]パネルを見てみましょう。画像だけでなく、テキストもリンクとして扱われているのが分かります(下図)。
では「design2」のデザインを変更してみましょう。下図のようなデザインにしました。なお、このレイアウトでは、テキストに適用されている段落スタイルに対して[スタイル再定義]を実行しました。つまり、「design1」と「design2」は、スタイル名は同じですが、内容は異なるということです。
なお、複数のレイアウトを分割して表示できるようになりました。ウィンドウ右下にあるレイアウトビューを分割するボタンをクリックします(下図)。
すると、ウィンドウが分割され、異なるレイアウトを並べて表示できます(下図)。再度、ボタンをクリックすれば、元の表示に戻ります。
では「design1」のテキストを修正してみましょう。「Vol.24」を「Vol.32」に変更しました(下図)。
すると、「design2」のテキストフレームに、リンクが変更されたことをあらわすアイコンが表示されます(下図)。もちろん、[リンク]パネルにも変更済みリンクのアイコンが表示されます。
マウスを重ねると、変更済みリンクで、クリックすれば更新されると表示されます(下図)。
クリックすると、リンクが更新されます(下図)。この時、テキストの書式までは変更されません。これは、「design2」の段落スタイルに対し[スタイル再定義]を実行していたからです。スタイルを作成していない場合や、[スタイル再定義]をしていない場合には、テキストの書式も「design1」の書式に変更されてしまいます。
なお、注意したいのは、テキストのリンクに対しても親子関係があるということです。ここでは「design1」が親のレイアウトで、「design2」が子のレイアウトとなっているため、「design2」のテキストを変更しても、その修正は「design1」には反映できません。
今度は、画像を変更してみましょう。[リンク]パネルで親となる画像を選択し、オプションメニューから[(画像名)のすべてのインスタンスを再リンク]を選択します(下図)。
画像を差し替えると、2つのレイアウトの画像が一気に差し変わります(下図)。
このように、代替レイアウトで作成した各オブジェクトは、リンク関係として運用することができるため、親のレイアウトの修正を子のレイアウトに反映できる点が大きなポイントです。