現在、Appleから販売されているマシンは、すべてIntelプロセッサに代わり、Power PCのマシンはなくなってしまいました。ユニバーサルバイナリ対応のアプリケーションならば、Intel Mac上でも Power PC上でも動作します。しかし、Power PC用のアプリケーションはIntel Mac上でそのまま動作しません。そのため、AppleはRosettaというプログラムを提供することで、Power PC用のアプリケーション動かすことを可能としました。しかし、内部でPower PC用のコードをIntel用のコードに変換しているため、その分、動作が遅くなると言われています。
今回、Mac Proを少しの間、借りられたのでInDesign CS2、Photoshop CS2、Illustrator CS2のそれぞれをテストして、現在私が使用しているPower Mac G5と比較してみたいと思います。
なお、マシンスペックは以下のようになっています。
●Power Mac G5(私のマシン)
Dual 2.5GHz Power PC/2.5GB DDR SDRAM/ATI Radeon 9600 XT
モニタ:EIZO ColorEdge CG19+MITSUBISHI RDF17IS
OS:Mac OS X 10.4.8
●Mac Pro(お借りしたマシン)
2×3GHz Dual+Core Intel Xeon/4GB 667 MHz DDR2 FB-DIMM/ATI Radeon X1900 XT
モニタ:Apple 23-inch Cinema HD
OS:Mac OS X 10.4.8
Intel Mac上でAdobe Creative Suite 2を動かす上でまず注意しなければならないのが、Adobeが動作保証をしているわけではないのでサポート対象外だということです。つまり、使用は個人責任となります。しかし、Web上では大きな問題もなく動作しているといった話を聞きます。また、短い期間ですが私も実際にさわってみたところ、現時点では特に大きな問題はなさそうです。
※ただし、以下に挙げる問題点が報告されています。
ます、よく知られている問題に以下のようなものがあります。
Version Cue CS2は動作しません(下図参照)。
http://kb2.adobe.com/jp/cps/229/229496.html
次に、InDesign CS2のパレット類に表示される数値が、小数点以下6位以上の細かい数値で表示されるという問題があります(下図参照)。
しかし、この問題はMac OS X 10.4.8にアップデートすることで解消されたようです。
http://kb2.adobe.com/jp/cps/229/229756.html
私もさっそくMac OS X 10.4.8にアップデートしてみましたが、特に問題はないようです。
他には、Illustrator CS2で楕円形にパスファインダ(型抜き)を実行すると、強制終了するといった問題があります。
#Mac OS X 10.4.9にアップデートすることで、解決したようです。
http://kb2.adobe.com/jp/cps/229/229975.html
Mac Proを使用して感じたのが、まず起動がむちゃくちゃ速いということです。私のG5が起動するのに約1分弱かかるところ、Mac Proは30秒弱で起動しました。また、Safariなどもかなり高速に動作します。
では、Adobeのアプリケーションの使用感について、ご報告したいと思います。
まず使用感ですが、InDesign CS2等も思っていたよりもずっと快適です。もっと「もっさり感があるのかな」と思っていましたが、かなりきびきび動作します。ハンドツールで画面をスクロールする時などは、「G5より早いかも」と感じました。しかし、速いとか遅いとかいった感想は、あくまでも個人の感覚なので、いくつかの操作におけるタイムを図ってみました。それぞれ3回ずつ実行してその平均値を取っています。
※なお、以下の結果は動作スピードを保証するものではありません。それぞれのマシンにインストールされたアプリケーションやフォントの数も違えば、モニター環境(G5はデュアルモニタ、Mac Proはシングルモニタ)等も異なります。あくまでも目安として考えて下さい。
まずはアプリケーションの起動のタイムを計りました。マシンを起動後の初回のタイムと2回目以降のタイムを計測しています。
InDesignの初回の起動はMac Proの方がかなり速いですが、PhotoshopとIllustratorの2回目以降の起動ではG5の方が速かったです。他はほとんど差はありませんでした。
では、各アプリケーションの動作を見ていきたいと思います。
●まずはInDesign CS2です。約127,000字のテキストをフレームグリッド(1ページあたり2370W)に自動流し込みで配置してみました。総ページ数で616ページになりました。
(G5)5分01秒 (Mac Pro)7分29秒
このドキュメントをPDF/X-1aに書き出してみます。
(G5)2分26秒 (Mac Pro)3分29秒
次にデスクトップ上の画像50点をドラッグ&ドロップで一気に配置してみました。
(G5)12秒 (Mac Pro)23秒
各操作の動作はG5の方が高速でした。
●続いてIllustratorです。まずは約18,000字のテキストを配置してみました 。
(G5)2秒 (Mac Pro)3秒
次にこのテキストをアウトライン化してみます。
(G5)13秒 (Mac Pro)23秒
続いて透明効果を適用した画像2点を一緒にラスタライズしてみました。
(G5)9秒 (Mac Pro)9秒
最後に3D効果の「回転体」を適用してみます。
(G5)34秒 (Mac Pro)35秒
アウトライン化以外の作業では、ほとんど差がでませんでした。
●では、最後にPhotoshopのフィルタを適用してみます。2000×3008pixelのRGB画像に対し、13種類のフィルタをアクションに登録して適用してみました。
(G5)46秒 (Mac Pro)64秒
G5の方が約1.4倍速かったですが、今度は別のアクションで試してみます。以下のアクションをダウンロードしてPhotoshopのベンチマークを計ってみました。
http://eshop.macsales.com/Reviews/Benchmarks/psbenchmark/OWC.atn.zip
結果は、
(G5)2分57秒 (Mac Pro)2分50秒
今度はMac Proの方が速いタイムとなりました。適用するフィルタやコマンドによってタイムは違うようですが、Mac Proの方がずっと遅いと思っていましたので意外な結果となり、ちょっとビックリです。
ちなみにユニバーサルバイナリ対応のAdobe DNG Converter Ver.3.6を使用して、RAW画像50点を一括変換してみました。
(G5)1分10秒 (Mac Pro)47秒
やはり、ユニバーサルバイナリ対応のアプリケーションだと、Mac Proの方が速いですね。
トータルで見たところ、やはり全体的にMac Proの方が動作は遅いようですが、処理させる作業によってはMac Proの方が速いものもあるようです。Intel Macの購入を考える方は、時期的なことを考えてもG4以前のマシンからの乗り換えの方が多いと思います。いくらRosetta上で使用するとCS2が遅くなると言っても、G4と比べればかなり高速になったと感じられるのではないかと感じました。Rosetta上でもそこそこ快適に動いており、Adobe DNG Converterの結果を見る限りでは、CS3でユニバーサルバイナリ化されたらかなり高速に動作しそうです。
現実問題として、既に新品ではPower Mac G5を購入することはできなくなってしまいました。高値で取引されている中古のG5を購入するのなら、将来的な事を考えて、Intel Macの購入もありかなと思います(ただし、仕事の都合上、classic環境が必要な場合は、この限りではありません)。
(追記 2007.2.20)
page2007にて「CS2 on Mac Proの勉強部屋」というタイトルで、Intel Macで使用するAdobe Creative Suite2に関するお話をさせていただきました。その時使用したスライド(PDF)をダウンロードできるように致しましたので、よろしければダウンロードして参考にして下さい。
https://study-room.info/id/file/page2007.pdf