No.25 Adobe Digital Publishing Suite その2

Adobe Digital Publishing Suiteとは?

Adobe Digital Publishing Suite(以下、ADPS)とは、

  • PRODUCTION Service(コンテンツ生成)
  • DISTRIBUTION Service(配信)
  • e COMMERCE Service(販売)
  • ANALYTICS Service(販売状況の分析)

の4つのサービスからなっているそうですが、ここではissueファイルを書き出すまでの『PRODUCTION Service(コンテンツ生成)』に関してのみ記述していきます。

ADPSで作成するコンテンツには、いくつかの特徴があります。例えば、iPad等のデバイスの向きを変えると、それに合わせてコンテンツの表示も縦用/横用にそれぞれ切り替わります。ただし、縦と横で表示切り替えたい場合には、縦と横のドキュメントをそれぞれ作成しておく必要があります。自動的に切り替え表示してくれるわけではなく、これまで以上に制作時間がかかりますので注意してください。なお、デバイスの向きを変えても表示を切り替えない場合には、縦または横いずれかのドキュメントのみを作成すればOKです。

また、横方向だけでなく、縦方向にページを繋げるといったことも可能です。つまり、横方向だけでなく、縦方向にもページをめくる(?)といった体験をユーザーにしてもらうことができます。ただし、注意したいのは、縦方向にページが繋がっているのかどうなのかが分かりづらい点です。バージョン1.3.0のAdobe Content Viewerからは、ウィンドウ右側に細いスクロールバーが付くようになりましたが、それまでは指でスライドさせてみないとページがあるのかどうかが分かりませんでした。ドキュメント制作時に目印となる矢印等を作成しておき、下方向にもページがあることを示しておくとよいでしょう。なお、768×4,000pixelといったように、縦や横に長いページを挿入することも可能になっています。

ちなみに、現段階でiPad上でのピンチイン・ピンチアウトには対応していませんので、拡大しなくても読めるような文字サイズを考慮して作業するとよいでしょう。また、インタラクティブコンテンツ以外はすべて画像化されてissueファイルに書き出されるため、現段階では文字の検索等もできません。

ファイルのまとめ方

ADPSで作業する際に重要なのが、ファイル名の付け方とファイルのまとめ方です。InDesignで制作したコンテンツは、最終的にAdobe Digital Content Bundlerに読み込んでissueファイルを書き出します。この時、ファイル名やファイルのまとめ方が間違っているとエラーが出て書き出せません。しかし、エラーメッセージは英語でごく短い文章なので、どこに問題があるかまでは分かりません。最終段階でエラーを出さないためにも、ファイル名やファイルのまとめ方はきちんと理解しておきましょう。

まず、デジタルマガジンとして使用するすべてのファイルは、『issue』と呼ばれるフォルダにまとめます(下図参照)。つまり、「issue」フォルダが1冊のデジタルマガジンになると考えてください。
※フォルダ名の末尾には、必ずしも「_issue」と付けなくてはならない訳ではありませんが、管理しやすくするためにも付けておくことをお薦めします。ただし、日本語は使用しないようにしてください。現在のAdobe Digital Content Bundlerでは、日本語を使用することはできません(後述する「stack」フォルダも同様)。



次に「issue」フォルダ内に「stack」と呼ばれるフォルダを作成します。「stack」とは記事をあらわしており、このフォルダ内にInDesignドキュメントやそのリンクファイル等の関連ファイル一式、そして目次として使用するPNG形式の画像(70×70pixel)を入れておきます(下図参照)。また、InDesignドキュメントのファイル名にもルールがあります。横用のドキュメントは末尾に「_h」または「_l」、縦用のドキュメントには末尾に「_v」または「_p」を付ける必要があります。
※目次用のPNGファイルは、あらかじめ「stack」の数だけ作成しておく必要があります。



なお、1つの「stack」フォルダのInDesignドキュメントは、すべて縦方向にページが繋がった状態で書き出されます。そのため、横方向にページを繋げたい場合には「stack」を分ける必要があります。つまり、記事(stack)の数だけ横方向にページを移動できるということになります。そのため、印刷用に作成した既存のInDesignドキュメントを流用するようなケースでは、ドキュメントを複数に分割しないとすべて縦方向に繋がってしまうので、ドキュメントをいくつかに分割するといった作業が必要になるケースも出てくるでしょう。ちなみに、下図のケースでは、2つの「stack」フォルダがあるので、横方向には一度だけページを移動することができるというわけです。



次に「OverlayResources」フォルダについて理解しておきましょう。このフォルダには、映像や音声といった、インタラクティブな機能の元データを入れておきます。フォルダの名前もこのまま「OverlayResources」としておかなければいけません。このフォルダ内にインタラクティブコンテンツの元データを、それぞれサブフォルダを作成して入れておきます(「OverlayResources」フォルダ直下においてはいけません)。つまり、インタラクティブな機能の数だけ、サブフォルダが必要になるというわけです。下図のケースでは、5つのインタラクティブ機能が用意されているということになります。
※例えば、Audioファイルを2つ使用するような場合でも、それぞれフォルダを分けて管理します。インタラクティブコンテンツ1つにつき、サブフォルダ1つと考えると分かりやすいです。
※ただし、Web Viewのように例外の機能もあります。



なお、この「OverlayResources」フォルダですが、「issue」フォルダ内に置くケースと、「stack」フォルダ内に置くケースがあります。実は、ファイルの管理方法は大きく2つあり、InDesignドキュメントをどのように管理するかで、「OverlayResources」フォルダの置き場所が変わってくるのです。
縦用と横用のInDesignドキュメントを同一フォルダ内で管理する方法(タイプA)と、別フォルダとして管理する方法(タイプB)の2つです。「タイプA」は縦用と横用で同じ「Links」フォルダを使用しますが、「タイプB」ではそれぞれ異なる「Links」フォルダを使用します。一般的に、「タイプA」は1人で作業するケース、「タイプB」は縦用と横用をそれぞれ異なる作業者が制作するケースに向いています(下図参照)。




このように、ファイルのまとめ方はちょっと難しいので、実際に作成する際には、問題なくissueファイルを書き出せたフォルダを利用して、中身だけ差し替えるといった使い方がお薦めです。また、先に記述したように、現在のAdobe Digital Content Bundlerでは日本語を使用することはできません。ファイル名やフォルダ名には日本語を使用しないようにしましょう。ただし、リンク画像のファイル名に関しては、日本語を使用していても問題ありません。

※なお、現段階で記述している内容は、あくまでも2010年10月25日にリリースされたベータ版のものとなっています。仕様変更等により、ここで記述した内容と異なる場合がありますのでご注意ください。


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