InDesignのインライングラフィックスは、かなり使い勝手が良くなっています。操作方法はQuarkXPressと同じですが、InDesignでは文字や図形・写真以外にも線やグループ化されたもの、複合パスのオブジェクトなどもインラインフレームとして使用することができます。言い変えるとほとんどのものがインラインフレームとして使用できるということです。また、インラインフレームの中にインラインフレームを作ることもできるので、色々な使い方ができます。
また挿入したインラインフレームは文字として扱うことができるので、ベースラインの移動やカーニング、回転、変形、サイズの変更などもすることができます。
今回はまずテキストフレームでのインラインフレームの動きを検証してみたいと思います。比較的良く使用すると思われる、図形と線と文字のインラインフレームで試してみました。
まず下図をご覧下さい。本文20Q/28H、A-CID新ゴRで[グリッド揃え]は[なし]、[文字揃え]は[仮想ボディの中央]を使用しています。
上図ではそれぞれのインラインフレームの縦の長さが、「1」が3mm、「2」が5mm、「3」が7mm、の円(緑)と線(青)と文字(赤)のインラインフレームを配置しました(本文の仮想ボディの天地に水色のガイドを引いてあります)。
まず「1」のケースを見てみましょう。「1」を見るとわかるように[文字揃え]で[仮想ボディの中央]を使用していても、配置したインラインフレームはセンターには揃っていません(試しに[文字揃え]を[仮想ボディの中央]以外の全てで試しましたが、どれを選択しても同じ結果になりました)。これは私の推測ですが、どうやら本文のベースラインにインラインフレームの下が揃っているようなのです。これを中心にくるようにしてみましょう。
上図のサンプルでは、本文のテキストフレームはY座標が100mmの位置に作りましたので、円がセンターにくるには[変形]パレットのY座標が109.5mmでなければなりません。実際は109.9mmになっていますので、正確にセンターに揃えたい場合は、[変形]パレットの座標の数値を見て、ずれている分(このケースでは0.4mm)だけベースラインシフトで調整してあげればよいでしょう。
このように[変形]パレットを利用すれば、正確にセンターに揃えることができます。
次に「2」と「3」のケースを見てみましょう。インラインフレームを配置した行のみ、文字がずれています。[文字揃え]を[仮想ボディの中央]以外にするとわかるのですが、配置したインラインフレームの位置はどの[文字揃え]でもまったく変わりません。つまり同一行に大きさの異なる文字やグラフィックがあると、大きいものに合わせて行送りが適用され、小さいものは選んだ[文字揃え]によって揃い方が変わってくるのです。
以下に他の[文字揃え]でのケースを紹介しますので、ご覧下さい。上から[欧文ベースライン][仮想ボディの上/右][仮想ボディの下/左]][平均字面の上/右][平均字面の下/左]の順で並んでいます。
この中で行送りがまともなのは[仮想ボディの上/右]と[平均字面の上/右]でしょうか。
仮に(仮想ボディの上からベースラインまでの間隔)をAとした場合、
Aより小さいインラインフレームを配置した場合、インラインフレームは文字のベースラインに揃いますが、インラインフレームがAと同じ大きさになった段階でインラインフレームの上は仮想ボディの上に固定され、大きくなるに従って下に延びていきます。ですからAより大きいインラインフレームを使用する場合は、[文字揃え]を[仮想ボディの上/右]又は[平均字面の上/右]にしないと、同一行にある文字列が下にずれてしまいます。一部の行でのみ行送りがずれてしまっては困りますから、Aより大きいインラインフレームを使用する場合は[文字揃え]で[仮想ボディの上/右]又は[平均字面の上/右]を使用するようにして、ベースラインシフトでインラインフレームの位置を調整して下さい(※但し、インラインフレームを本文と別の独立した段落として使用する場合は特に問題ないと思われます。例えば、別フレームで見出しを作り、それをインラインフレームとして配置する場合など)。
あと、同じ行の中に異なる大きさのインラインフレームがある場合は、小さいインラインフレームの下が、大きいインラインフレームの下に揃いますので注意して下さいね(下図)。
また今回、検証してみて不思議だったのは、インラインフレームを選択ツール(又はダイレクト選択ツール)で選択して[変形]パレットを使用して大きさを変える事はできる(例えば縦横3mmのインラインフレームを縦横5mmに大きくしたり)のですが、上下への移動は、できる場合とできない場合があったのです。下図のように移動できる場合も有りましたし、移動できない場合もありました。時にはアラートが出たり……。
皆さんの所ではどうだったでしょうか。よろしければお知らせ下さい。
次に縦組みではどうでしょうか。下図は3mmと5mmと7mmの円を配置した例です。[文字揃え]は[仮想ボディの上/右]を使用しています。
これを見ると横組みの時と全く同じように配置されています。試しに他の[文字揃え]を選択するとインラインフレームがAより大きい場合は、横組みの時と同じように文字がずれます。
また、上図を見るとわかるのですが、横組みの時と同じように0.4mmだけ左にずれています。試しにフォントをロダンMに変えてみたものが下図です。
当然フォントによってベースラインは違いますから、インラインフレームの位置も変わるようです。
ただ縦組みの場合は注意しなければならない事があります。下図をご覧下さい。
縦組みのテキストフレームと三角形をインラインフレームとして配置したものです。なぜか90°回転しているのがわかります。イランインフレームは文字として扱われますので、文字ツールで配置したインラインフレームを選択し[文字]パレットで90°回転をかけてみたのですが、縦向きになってくれません。
ではどうすればいいのでしょう。下図をご覧下さい。
配置する前に、配置するインラインフレームを90°回転させたものをコピーして配置することにより、この現象は回避されます。しかしなんか複雑な仕様ですね……。他にもインラインフレームで気がついた事などありましたら、お知らせ頂けるとありがたいです。