今回のDTPの勉強部屋は、『InDesignの勉強部屋』10周年を記念して、「InDesign特集」で開催しました。Session 1では森裕司氏(InDesignの勉強部屋)によるInDesignの操作性を高める講座、Session 2では紺野慎一氏(凸版印刷株式会社)によるInDesignの「レイアウト調整」の紹介、Session 3では岩本崇氏(アドビシステムズ株式会社)からInDesignを中心とした電子出版についてお話しいただきました。加えて、初の試みとして、InDesignについて語るパネルディスカッションを行いました。また、エンジニアのNat McCully氏(Adobe Systems Inc.)からいただいたビデオレターも上映いたしました。
Session 1:覚えておこう! InDesign使いこなし術
スピーカー:森裕司氏(InDesignの勉強部屋)
最初に、InDesignが備える4種類のフレームについて触れられました。特に、プレーンテキストフレームとフレームグリッドの違い及び注意点について、丁寧に解説されました。
次に、スタイル機能について触れられ、親子関係を持つスタイルにおける注意点の説明の他、オブジェクトスタイルのオプションを設定することによる効率的な活用法の実演等をされ、会場からは感心の声が多数聞かれました。デモを基調に、淀みのない、非常にスマートなセッションにまとめられました。
Session 2:脱・食わず嫌い! 今こそ使い倒そう「レイアウト調整」機能
スピーカー:紺野慎一氏(凸版印刷株式会社)
Session 2では、凸版印刷で書籍の組版に携わっておられる紺野慎一さんがInDesignの「レイアウト調整」機能を紹介されました。InDesignの先駆けとなったPageMakerの時代から既に搭載されていた機能でありながらも、実際あまり使われていないというInDesignの「レイアウト調整」機能を深く掘り下げられました。
「レイアウト調整」は、一般にInDesignには不得意であると言われる、組版設計の変更やデザインでの試行錯誤を、直感的でスマートなものにする便利な機能であると紹介されました。また、「食わず嫌い」になる原因としては、パネルの設定が分かりにくいところにあると述べられました。
デモでは、パネルの設定やテキストボックスに効果が適用される仕組み等を分析され、行間、版面、配置写真の比率までを自在にコントロールする方法を披露されました。実際に出版された書籍の事例も取り上げ、デモデータだけでなく血の通ったデータでも使えることを明らかにされました。
「レイアウト調整」機能の活用法として、背幅の変更がありうる書籍の表紙制作の方法を提案され、電子書籍で見られる、横用、縦用、別の媒体用など、複数の判型への対応が必要な場合にも便利ではないかというお話しもありました。
大のドラゴンズファンであることでも有名な紺野さんは、ドラゴンズのホームグラウンド名古屋ということで、ユニフォーム姿で登壇されました。このようなパフォーマンスも交え、「レイアウト調整」の有用性を、深く、余すところなくご紹介されました。
Session 3:InDesign CS5.5の魅力!
スピーカー:岩本崇氏(アドビシステムズ株式会社)
「DTPユーザーも紙だけでなく電子への取り組みもやっていかなければならい」とし、InDesign CS 5や5.5から強化されている電子出版への対応について紹介されました。
電子出版における有力なファイル形式を解説し、InDesignにおける電子出版への対応について、従来のPDF、FLASHから新たにePub やFolioに対応し、さらに機能を強化させつつあることを述べられました。
「目の肥えたユーザーには静的な画面では電子書籍として認められない風潮がある」というトレンドを紹介され、雑誌向けのフォーマットとしてのFolio、書籍向けのフォーマットとしてのePubのうち、Folioを中心に進められました。
iPad等のスレートデバイスにおいて、紙と同じような画面、動画、インタラクティブな機能やインターネットとの連携といった三つのフォーマットを自在に操ることができるFolioの機能を、GOLF TODAY(三栄書房)、Hutte(山と渓谷社)、FraU(講談社)等での実際の導入事例をあげて解説されました。
FolioとAdobe Digital Publishing Suiteの導入方法、制作方法のデモ、Adobeのデザインマガジンやデジパブマガジンといった情報サイトの紹介もされ、InDesignから広がる動的でインタラクティブな電子出版の世界を紹介されました。
パネルディスカッション
パネラー:紺野慎一氏(凸版印刷株式会社)、中村美香氏(Adobe Systems Incorporated)、岩本崇氏(アドビ システムズ株式会社)、姫井晃氏(株式会社モリサワ)、森裕司氏(InDesignの勉強部屋)
InDesignをテーマに、当勉強会では初めてのパネルディスカッションを行いました。様々な立場でInDesignに深く関わってこられた方々を国内外からお迎えし、お話しをいただきました。
主に中村氏から日本語へのこだわりや印刷を重視しつつ新しい分野へ対応するという基本姿勢について、姫井氏からInDesignが登場した当時の市場背景、紺野氏・岩本氏から黎明期のテストや出力への対応といったお話しをいただきました。また、オペレーション時のクラッシュレポートはAdobeに確実に届く仕組みになっているため、是非「いいえ」を押さずに、レポートをあげてほしいという提案もありました。
開発、マーケティング、出力ユーザー、制作ユーザー、大規模ユーザーといった様々な視点から、InDesignが登場した背景から現在、そして未来について語られました。
レポート:壱岐孝平、的場仁利