第16回勉強会終了報告

今回のDTPの勉強部屋は組版特集でお送りしました。Session 1では出版デザイナーの大熊肇さんが、組版の悪い例と良い例を比較するビフォー・アフター形式のプレゼンテーションをされました。Session 2では「なんでやねんDTP」の大石十三夫さんと「大阪DTPの勉強部屋」を主宰される宮地知さんのお二人が「漢字の字体」と「組版の禁則処理」の講義をされました。今回も開催日の2週間以上前に満席となり、懇親会にも多数の方にご参加いただくことができ、大変な盛況をいただくことができました。


Session 1:「文字の組み方―組版/見てわかる新常識」
スピーカー:大熊肇氏(出版デザイナー、有限会社トナンtonan's blog

出版デザイナー大熊肇さんの執筆により『アイデア』や『デザインノート』を発行する誠文堂新光社から発売された、同名の書籍の内容を中心とした発表でした。
「書体によって字体は違って当然なものである」「筆の流れを知ると文字のデザインが見えてくる」「DTPで実現できることは、過去に縛られずに実践した方が良いこともある」という、DTPでの組版の新常識を示唆する画期的な内容となりました。
また、大熊さんの講演は先に開催された「PAGE2010」デジタルワークフロー・ソリューションZONE(YUJIさんプロデュース)でも好評を博し関東や関西から20数名もの方が来場されました。

勉強会では、書籍の中の「タイトルや見出しについて」「和文本文組み」「欧文本文組み」「和文に欧文が混ざった場合」「資料」という5章の中から、「タイトルや見出しについて」「和文本文組み」の2つにポイントを絞り解説されました。

前半の「タイトルや見出しについて」では、文字間の詰め、ルビ、約物、和文フォント、字体、欧文フォントについて解説。後半の「和文本文組み」では、版面設計、ぶら下げ、丸.弧の扱い、字詰め、文字サイズ、ウィドウとオーファン、行末行頭の処理、プロポーショナル詰め、見出しの作り方、約物の誤用、ルビについて解説されました。

合計40もの事柄を、悪い例と良い例を比較するビフォー・アフター形式でテンポよく紹介されました。加えて「号数システムのルビサイズ」「美華書館の活字サイズ」など、当勉強会で初めて発表された書籍外の内容もありました。

印刷史、書道、ビジュアルデザイン、言語学、認知心理学などの知見が織り交ぜられ、筆脈、美華書館、本木昌造、築地活版、説文解字、康煕字典、佐藤敬之輔、オックスフォードルール、シカゴマニュアル、速読テストなどといった専門用語も行き交う、第一線の文字と組版の世界が紹介されました。

会場では、筆の流れを意識した文字間詰め、ルビの扱い、欧文フォントの4ラインと5ラインの設計の違い、行長のバランス、約物の扱いや誤用などが注目を集め、あるあるという声や、かっこよく仕上がった組版に対して感嘆の声が全編で聞かれました。


プチセッション:
今回で2回目となるプチセッションには7名の発表者が集まり、それぞれ4~5分の持ち時間の中でTIPSの披瀝や自己紹介をしていただきました。

スピーカー:杉山元康氏FeZn.com
ご自身が開発を続けている、「編集尺」を紹介されました。ポケットに入れて持ち歩けるクレジットカードサイズの紙面に、編集者にとって必要な目盛り・線幅・アミ点などのスケールが無駄なく収められた便利なもので、ノベルティーとして配布し会場から喝采を浴びました。

スピーカー:藤林朋実氏朋茶的ブログ
Acrobat 8以降に実装された「共有レビュー機能」を利用した校正方法を紹介されました。準備期間から運用時にかけてのトラブル事例と、誰がいつどんな根拠に基づいて修正指示を出したのかという詳細な履歴が残ること、そのため不明点の問合せ等がスムーズに行えるというメリットを解説されました。

スピーカー:坂口礼治氏株式会社ケーエスアイ
Illustratorによるデータ作成時に、初心者だけでなく時にはベテランでさえ陥りがちな注意点について、具体例を挙げて解説されました。また入稿時のチェック方法として、Acrobat 7以降に実装された「出力プレビュー機能」を用いたチェック方法を実際にデモンストレーションし、その有用性を解説されました。

スピーカー:横山裕司氏株式会社ケーエスアイ
新人として自己紹介をされました。仕事の楽しさ、勉強会の素晴らしさについて語られ、参加者に清々しい感動を誘いました。

スピーカー:浅田正洋氏Cross the Sea
InDesign CS4から実装された「IDML」を紹介されました。「IDML」の可能性について、従来の自動化ツールであるJavaScriptやAppleScriptと比較しつつ、その画期的さを解説されました。また、ご自身が管理人を務める「IDML Wiki」において、これまで英語版しかなかった「IDMLマニュアル」を有志により日本語に翻訳し公開されたという情報もアナウンスされました。

スピーカー:的場仁利氏(文字エンジニア)
「文字」と「色」には印刷に携わるものでなければ作れない高度なものがあるとし、「『文字』を売りに、高価格・高付加価値戦略を行おう」というアグレッシブな講義をされました。「文字」に関連する多くのビジネスチャンスを紹介し、Win-Winを目指そうという提言をされました。「衰退産業を恥じることはない」とのフレーズが大変印象的でした。

スピーカー:尾花暁氏あかつき@おばなのDTP 稼業録
東京でご自身がオーガナイズする「DTPの勉強会 第0回」の告知をされました


Session 2:「InDesignの『字形切り替え』と『禁則処理方式』を中心に」
スピーカー:大石十三夫氏(なんでやねんDTP)、 宮地知氏(WORK STATIONえむ大阪DTPの勉強部屋

大石さんの解説に合わせて、宮地さんがInDesignを操作する形で進行されました。お二人の呼吸もぴったりで、ユーモアのある掛け合いもあり、「漢字の字体」と「組版の禁則処理」という高度で繊細なテーマを楽しく魅せた、「ライブ感覚」の講義となりました。

前半では出版物の字体使用の実情に応えるための「字形切り替え」についてお話しされました。また、国語施策、人名用漢字、JIS規格の密接な関係についても詳細に解説されました。

出版物では「歌集では全体が旧字体のものもある」「一般的には『常用漢字』と『印刷標準字体』を用いている」という状況を紹介。更に、「表外漢字字体表」などを根拠とし、 デジタルフォントで一般的に表示される「拡張新字体」を使用しない合理性を解説され、「テキストデータは『常用漢字表』の中の文字しかプロには使えるものではない」ということを訴えられました。

出版業界では比較的安定した字体の運用がなされている一方で、「我々DTP関係者がJIS一辺倒になっており、混乱の原因を作っている」という問題を提起されました。そして「変換の必要はあるが、OpenTypeフォントの豊富なグリフを用いて字体を適切に使いこなそう」という提案をされ、InDesignの字形タグに頼らないスクリプトを用いた効率的な字体変換のテクニックを披露されました。

後半はInDesignでの「禁則処理方式」に関して、CS2以降に搭載された「調整量を優先」を利用することを提案されました。

従来の「追い出し優先」や「追い込み優先」では行頭/行末禁則文字がなければ調整をしない仕様でしたが、「調整量を優先」を使えば行頭/行末禁則文字の有無にかかわらず字間を調整してくれるという優位性を紹介。「文字組アキ量設定」において仮名の文字間にマイナスの最小値を設定し、優先度を上げることでより緻密な調整が実現できることも併せて紹介されました。
ただし、優先度を上げると文字間を詰める場合だけでなく空ける場合も優先されてしまう点にも言及し、注意を促されました。

なお、大石氏がフォローアップ記事をご自身のブログで公開されておりますので、ぜひ参考にしてください。

DTPの勉強会にご参加された皆様へ
http://d.hatena.ne.jp/works014/20100215
「DTPの勉強部屋 第16回勉強会」フォロー
http://d.hatena.ne.jp/works014/20100216

レポート:壱岐孝平的場仁利


第16回勉強会アンケート

第16回勉強会に参加された皆様、お疲れさまでした。
できましたら、勉強会に参加された方は以下のURLからアンケートにお答えください。
よろしくお願い致します。
https://study-room.info/dtp/mailform2/form.html


キャンセル待ち&第16回懇親会会場

おかげさまで第16回勉強会への申し込みがいっぱいとなりました。
以後、キャンセル待ちとなりますので、参加を希望される方は、右上の「お問い合わせ」ボタンから、お名前、メールアドレス等をご連絡ください。

また、第16回勉強会後の懇親会会場が決定しましたのでお知らせいたします。

場所:あぶりや 隠れ家
   JR名古屋駅桜通口から東へ徒歩3分
時間:午後6時15分~
料金:4,500円
http://gourmet.walkerplus.com/155156016005/


プレゼント

2月13日(土)の勉強会に参加された方には、もれなく『InDesign スタイル機能Perfect Book』を差し上げます(非売品です)。
この小冊子は、私(YUJI)と吉田印刷所さん、ユポ・コーポレーションさんのコラボ企画により印刷したもので、InDesignの(表スタイル・セルスタイルを除く)すべてのスタイル機能を分かりやすくまとめてあります。
これを読んでいただければ、InDesignのスタイル機能がかなり理解できるかと思いますので、良かったら勉強会にご参加下さい。


なお、私が書いた『速習デザイン InDesign CS4』も、いつものようにジャンケンにより数冊プレゼントできる予定ですので、お楽しみに。


第16回勉強会のお知らせ

第16回勉強会の開催が決定しましたのでお知らせいたします。
セミナー(および懇親会)受講希望者の方は、「勉強会お申し込み」ボタンからお申し込みください。

■勉強会
日 時:2010年2月13日(土)午後2時~6時00分(1時30分より受付開始)
場 所:ウインクあいち(愛知県産業労働センター)903
    〒450-0002 名古屋市中村区名駅4丁目4-38
    名古屋駅より徒歩約2分
受講料:2,000円(希望者には領収書を発行できます)

●内容(予定)
Session 1:文字の組み方 ―組版/見てわかる新常識
○筆脈や文字のふところから探る文字の詰め具合
○和文横組みは英文横組みに妄信的に倣ってよいのか
 ハイフンとダーシ
 数字と単位の間隔
 漢字と数字の間隔
○マヌケ引用符を廃す
○書体によって字体は違って良い
○欧文フォント―4ラインと5ライン
○和文フォントと欧文フォントの設計の違い
○似て非なる欧文フォントは合わせて使わない
○欧文小文字は字間を空けない
○和文付属フォントで英文を組まない
○オブリークは使わない
○縦組み中で回転させたアルファベットの調整
○学参フォントは使用不可
○行長は文字サイズの整数倍に
○一律1歯詰めを廃す
○程よい行間
○行頭,行末のカギ括弧を考える
○読む距離によって違う最適な文字サイズ
○小見出しの大きさと位置
○カギ括弧の大きさを考える
○拡張新字体のクリーニング

スピーカー:大熊 肇 氏(おおくまはじめ 出版デザイナー)
1960年,埼玉県春日部市生まれ。8歳から書道教室に通う。22歳の頃,印刷文字(明朝体)に興味を持つ。1987年,専門学校桑沢デザイン研究所リビングデザイン研究科グラフィックデザインコース卒業。道吉デザイン研究室を経て独立。
1991年,独学でDTPをはじめる。有限会社トナン・代表。
著書に『文字の骨組み―字体/甲骨文から常用漢字まで』(彩雲出版,2009)。共著に『組版/タイポグラフィの廻廊』(白順社,2007)。

●プチセッション
全員参加型の勉強会を実現すべく、4~5名の方に1人5分程度の自己紹介を兼ねたプチセッションをお願いしたいと思います。
日頃している仕事の紹介やぜひ紹介してみたい便利な機能、アプリケーションへの要望や不満な点など、なんでもけっこうです。良かったらしゃべってみませんか?
しゃべってもよいという方は、セミナー申込時に「プチセッション」で「しゃべってもよい」にチェックしてください。

Session 2:InDesignの「字形切り替え」と「禁則処理方式」を中心に
●InDesignの字形切り替え(旧字体/各種JIS/エキスパート/印刷標準字体などの違いと背景)を解説し、書籍組版において、私が実際に行っている方法をご紹介します。
●「禁則処理方式」の「調整量を優先」の有効性を他の方式との比較で実証し、それをさらに有効に機能させる「文字組みアキ量設定」について、私が実際に行っている方法をご紹介します。

スピーカー:大石 十三夫 氏(なんでやねんDTP)&宮地知氏(work station えむ