今回のDTPの勉強部屋は、Adobe Creative Cloudとアートディレクションの2つのテーマで開催いたしました。
Session 1では、当勉強会の会長であり、DTP解説書の執筆、トレードショーでの技術セミナーのオーガナイズ、ウェブサイト「InDesignの勉強部屋」の運営等をされているYUJIさんから「Adobe CC新機能紹介」として、Adobe Creative Cloudの各製品に新しく追加された新機能を、デモを中心に紹介していただきました。
Session 2では、「グラフィックデザインのツボおし」として、広告の最前線で活躍される一方、大学で教鞭をとられているアートディレクターのカイシトモヤさんにご登壇いただき、実際世に出た作品を事例に、なぜこのようにデザインしたのかという考え方を解説していただきました。
また、Session 1とプチセッション拡大版にアドビシステムズの岩本崇さんにご参加いただき、Adobe Creative Cloudのメーカー直発信の情報を提供していただきました。
Session 1:Adobe CC新機能紹介
スピーカー:YUJI氏(InDesignの勉強部屋)
Session 1は、ウェブサイト「InDesignの勉強部屋」や本勉強会を主宰しているYUJIさんに、Adobe Creative Cloud(クリエイティブ・クラウド以下CC)の新機能について解説していただきました。急遽、アドビシステムズの岩本崇さんも加わり、補足説明や開発に関する苦労話などを交えることで、よりわかりやすい内容となりました。
まず最初にPhotoshop CCの新機能。従来の「アンシャープマスク」よりもおすすめの「スマートシャープ機能」、手ブレ写真のブレを劇的に改善する「ぶれの軽減」、解像度が足りない画像に対し、従来の「バイキュービック法」よりも高い精度で画像を拡大する「アップサンプリング」機能、従来よりも強化され、画像に非破壊でフィルタをかけられる「スマートオブジェクト」機能など、おすすめの新機能を次々にデモンストレーションを交えて紹介、他にも「Camera Raw」「切り抜きツール」への追加機能などの紹介もありました。
次にIllustrator CC。フォントをアウトライン化しなくても直感的に文字の変形ができるうえに、下位バージョンも互換する「文字タッチツール」、強化された「ブラシ」「パターンブラシ」、使い勝手が向上した「自由変形ツール」、これまではInDesignでしかできなかった複数画像の配置、新たに追加された「パッケージ」機能やCSSへの書き出し機能などが紹介されました。
InDesign CCの一番大きな変化は、64ビット対応になったこと。そして「今後のアップデートでもっと処理速度が速くなる予定」と岩本さんの補足説明がありました。その他、細かい追加機能や使い勝手の向上、新たに追加されたQRコード生成機能や向上したEPUBへの書き出しなどの紹介がありました。
プチセッション:
今回は3名の方と、拡大版としてアドビシステムズ様からAdobe Creative Cloudのご発表をいただきました。
スピーカー:加納佑輔氏(株式会社ソウサス)
日本語にこだわるWebデザインをされている加納佑輔さんが「名刺を真剣に作ってみよう 効果のでる名刺をつくるために」として、デザインの大切さを名刺を通して訴えられました。論理的な理由が説明ができることの大切さを述べられ、そのためのチェックシートを公開されました。
また、プロデューサーの中嶋正博さんが登壇され、大寳製版と加納さんが共同で手掛けた仕事、「土岐市観光ガイドブック」が当日の中日新聞に掲載されたことを紹介され、デザインの大切さを補足されました。
最後に、新たに発足したサークル、「日本語デザイン研究会」のメンバー募集を告知されました。
⇒スライドPDFへのリンク
⇒日本語デザイン研究会 https://www.facebook.com/nihongoD
スピーカー:的場仁利氏(株式会社駒平キウブ商事)
結婚式の引き出物で有名な鯛の形のお砂糖「おめで鯛」を考案した会社でプロダクトデザインをされている的場仁利さんが、「たのしいお砂糖のモノづくり」として、食品メーカーでのモノづくりを紹介されました。会社の歴史と技術を紹介され、予告として企画中の講座イベントの講師と受講生の募集を告知されました。
スピーカー:山田学氏(大寶製版株式会社)
山田学さんが副理事長を務められている中部グラフィックコミュニケーションズ工業組合が9月27日(金)にウインク愛知で開催するセミナー、「あなたは『なに』を売っていますか? 即実践! マーケティングの極意」のPRをされました。
⇒中部グラフィックコミュニケーションズ工業組合 http://gcc.sky-inet.ne.jp/
スピーカー:岩本崇氏(アドビシステムズ株式会社)
プチセッション拡大版として、アドビシステムズの岩本崇さんが「Adobe Creative CloudのPR」として、Adobe CCの気になるポイントやメリットをご発表されました。
まず、作り手の誤った色指定により白いオブジェクトが消えてしまう有名な印刷事故事例「白ノセ」を防ぐ措置がCCからは講じられるようになったという、グラフィックのユーザーには大変有用な変更点の紹介から入られました。
次に月額制という購入形態の変化を説明。その後、アドビの全てのクリエイティブ用ソフトが使える、ネットワークストレージが利用できる、Digital Publishing SuiteでiPadアプリを作ることができる、ビデオ等の学習教材が提供されることで他の分野のクリエイティブに進出しやすくなる、ソフトのバージョンが年ごとに記録され後から選択することができる、名称がクラウドとなっているがこれまで通りPCにダウンロードして使う方式である……等々、多くのメリットやユーザーから寄せられる疑問点にメーカーとして、またご自身がユーザーであった経験から、熱く解説されました。
最後に、Adobe製品の新バージョンリリースに際して、ユーザーからフィードバックをしてもらう、「プレリリースプログラム」の参加者募集を告知されました。
Session 2:グラフィックデザインのツボおし
スピーカー:カイシトモヤ氏(room-composite代表、アートディレクター/グラフィックデザイナー)
Session 2は、東京・下北沢でグラフィックデザイン会社「ルームコンポジット」を経営される一方、東京造形大学で教鞭をとられている、カイシトモヤさんに登壇いただきました。
カイシトモヤさんは、「ゆず」や「TOKIO」をはじめとするメジャーアーティストから声優やビジュアルバンド等の音楽CD・DVDジャケット、装丁、美術館……等々の仕事をされ、数多くの賞にも輝く正に第一線のアートディレクター。
講演では、「グラフィックデザインのツボおし」として、グラフィックデザインの要点とその秘訣、制作方法を実際の作品を示しながら解説いただきました。
グラフィックデザイナーの活動から、音楽CD、商業施設のPR誌、スタンプラリーイベント、美容室の仕事、グラフィックデザイン展、家具メーカー等々多くの事例を紹介されました。中でも商業施設・恵比寿ガーデンプレイスのPR誌「YEBISU STYLE」に時間を多く割いて解説。タレント撮影の工夫、紙袋に見立てた特集枠、ばらばらに描いたを一枚絵に見せる工夫等、制作時の表現のこだわりを紹介。その中で「デザイナーが自分の遊び場を見つける」こと、「感覚を感覚のままにしない」で言語化する、「イメージの共有方法を見つける」といった、考え方や心構えを多数織り込み、アートディレクションの仕事の進め方の全体像を披露されました。
最近のPhotoshopはローディングアイコンが出る暇もないくらい処理が速いので、コーヒーブレイク用に「回転アイコンのボタン付けてみたら……」といった提案も飛び出し、デザイナーらしいウィットに富むテンポで進められました。
教育者としての活動からは、「タイポグラフィーライブ」と題した児童・生徒に向けた模擬授業を紹介。HelveticaとTimesという定番フォントをプリントしたものを切り取って自分の名前を作る課題で、手作りでやらせるととてもおもしろい作品ができてくるが、コンピュータでやると途端におもしろいものができなくなってしまうという現象を報告。アナログとデジタルの橋渡しをしたいと述べられました。
レポート:加納佑輔、的場仁利