今回のDTPの勉強部屋は、Session 1では「これだけは覚えておきたいフォントの話」と題して、YUJI氏よりフォントに関するお話をしていただきました。Session 2では「クリエイター必見!トラブルを防ぐ最新のPDFワークフロー 〜Acrobat Proをとことん使い倒そう〜」と題して、大倉壽子氏よりPDFのお話をしていただきました。
Session 1:これだけは覚えておきたいフォントの話
スピーカー:YUJI 氏(InDesignの勉強部屋)
Session1では「InDesignの勉強部屋」を主催されるYUJIさんにフォントについてお話いただきました。始めに、「フォントには分類方法に応じてさまざまな呼び名がある」として、データの持ち方による分類、表示方法の違いによる分類、PostScriptフォントの用途による分類、PostScriptフォントの内部構造による分類を紹介されました。続いて、フォントには書体名とPostScriptフォント名の2つの名前があり、各フォントの特徴として、OCFフォント、CIDフォント、OpenTypeフォントの特徴を紹介されました。その中でOpenTypeフォントのメリットとして、文字数の拡張、ユニコードベース、クロスプラットフォーム、ダイナミックダウンロードを挙げられました。また、注意すべきこととして、フォントのバージョンをチェックすること。アウトライン化をすると修正ができない、低解像度プリンタでは文字が太ってしまうことなどから、アウトライン化はやめるべきとのことでした。注意するフォントとして.dfont、Nフォント、IVSフォントなどを挙げられ、詳しく書かれているサイトとして「DTP Transit」「ちくちく日記」を紹介されました。
最後に、文字詰めDEMOとして、さまざまな文字詰めをIllustratorとInDesignの違いを紹介しながら披露されました。
レポート:大島綾華(大寶製版株式会社)
プチセッション:
今回は5名の方からご発表いただきました。
スピーカー:足立隆明氏(アイ・ディー・エー株式会社)
「InDesignでラクに多言語化」として、翻訳者支援ソフト「TRADOS」を利用した効率的な作業を紹介されました。InDesignドキュメントからIDMLに書き出し、TRADOSに読み込むことにより翻訳支援が出来、外国語の組版作業がこれまでより効率よく出来るようです。そのIDMLを再度InDesignで読み込むことによりコピーペーストでは起こりがちな人為的ミスを軽減するとともに、メモリ化することで再利用が出来ます。
スピーカー:菊池謙氏(浜島書店)
「Image Magick コマンドラインで画像ファイル操作」として、複数(大量)の画像処理を効率良く、出来るだけ自動化出来るChipsを紹介されました。Windowsではコマンドプロンプト(Macではターミナル)を使用することによりPhotoShopのアクションを使用するよりも高速に、またOS標準のバッチ処理を利用したりカスタマイズすることが可能です。
・画像形式の変換 ・リサイズ ・回転 ・合成 ・フィルター etc
菊池さんの自作による比較明比較暗合成ソフト「kikuchimagick」も紹介されました。
スピーカー:松下寛子氏(ホコホコ)
「『紙加工のDIY』手作りのススメ」として、楽しみながらひと工夫することで付加価値をつける手法を紹介されました。
使用する道具
・穴あけポンチ(ハトメ&カシメ) ・サークルカッター(コンパスカッター)
・コーナーカッター(角丸加工) ・糸かがり綴じ ・目打ち ・針
・低価格で出来るカッティングマシン CAMEO ¥25,000位
→紙(印刷物)をイラレのパスで自由な形に切り抜き加工できる
dxfファイルは専用ソフトのシルエットスタジオを使用
スピーカー:山川芳範氏
「カラまね」として、カラーマネージメント(シミュレーション)ソフト、「カラまね」を紹介されました。Windowsのみ対応、色の苦手意識をサポートするユニバーサルデザインの観点から「視覚障害」に対応したプレビュー機能も搭載しています。
スピーカー:川原正隆氏(株式会社ニューキャスト)
「末端の制作者を印刷事故からどう守るか」として、クライアント→営業→デザイナー(オペレーター)の立場と責任の所在について理想と現実を笑いを交えて紹介されました。また、3月下旬にリリース予定の新商品校正支援ツール・PDF差分チェック「dproofs」を紹介されました。
※自社の求人(スタッフ募集)もされました。
スピーカー:大倉壽子氏(アドビ システムズ)
Adobe Creative Cloud のPRをされました。
・導入のメリット
・個人版とグループ版との違い
・期間限定の割引特典
・今後のアップデートと下位バージョン対応について etc
レポート:中嶋正博(大寶製版株式会社)
Session 2:クリエイター必見!トラブルを防ぐ最新のPDFワークフロー
〜Acrobat Proをとことん使い倒そう〜
スピーカー:大倉壽子氏
Session2では、アドビ システムズで全製品を網羅してセミナーを担当されているスペシャリスト大倉壽子さんによる、PDF活用法についてのお話をいただきました。大倉さんはとても春らしい桃色のお着物をお召しで、セミナーのため全国を飛び回るご自身を「晴れ女」と紹介され、勉強会当日も例に漏れず名古屋は晴天、全国どこへ行っても「だいたい晴れる」そうです。
基礎知識として、最初にPDFの種類による使い分けと・アクロバットのカスタマイズについてお話しされました。次に、印刷におけるPDFワークフローの活用ということで、EPSのワークフローからPDFのワークフローへ移行することのメリット・デメリット等について解説され、脱EPSを強く提唱されました。しかしPDFは万能ではないので、制作現場が自分のデータに「責任」と「自信」を持つこと、そして印刷会社は自社のワークフローについての正しい情報を公開すると共に、双方のコミュニケーションを密にすることが、印刷事故を防ぐために必要であると仰っていました。
ここからが本題のPDF活用法ということで、まずPDFの校正(レビュー)を効果的に使う方法を幾つかご紹介されました。修正指示を出したり、プレゼン資料の作成などにはとても便利に活用できます。校正作業をプリントアウトした紙のワークフローから、PDFワークフローへ移行することで、コミュニケーションが正確に素早くできるなどの利点が多くあるので、コスト削減・時短にも役に立てて欲しいとのことでした。更にAcrobatの出力プレビューやプリフライトの活用により、制作・印刷の双方でチェックすることによて、印刷事故や予期せぬ結果を防ぐこともお勧めされました。
この他にも便利なPDFの活用法について、大倉さん自身ももっとお話をされたいという雰囲気の中お話を終えられました。
レポート:市場都萌(大寶製版株式会社)