今回のDTPの勉強部屋は、印刷をテーマに開催しました。Session 1ではグラフィック社で『デザインのひきだし』の編集長をされている津田淳子さんが用紙・印刷・加工に関するお話しをされました。Session 2では、印刷機長や工程管理の仕事をされていた村上良日さんと株式会社ケーエスアイで製版・出力業務に携わる坂口礼治さんのお二人が、データ入稿後の印刷所での工程を紹介されました。今回は講義時間の都合でプチセッションは行えませんでしたが、講義終了後の交流会、その後の懇親会にも多数の方にご参加いただくことができました。


Session 1:今こそ! 印刷・加工をもっともっと使いこなす。
スピーカー:津田淳子氏(株式会社グラフィック社、『デザインのひきだし』編集長)

デザイナーに向けて用紙・印刷・加工の技法を紹介してきた雑誌、『デザインの引き出し』の編集長である津田淳子さんが、実物や動画も交えて特殊印刷の素晴らしさを語られました。素材と技法の紹介から、特殊印刷に対する考え方、現場の口説き方やお客へのプレゼンといった採用までの道のりまで、紙媒体に関するさまざまなアイデアが体系的に紹介されました。

これまでに刊行された10冊の『デザインのひきだし』の内容をもとに進められ、その中での「紙・印刷・加工Best 8」など、さまざまな素材と技法を幅広くご紹介されました。例えば参加者全員に配られた、デザインのひきだし10号の付録である「スパイノート」だけでも、水に溶ける紙、コインでかける紙、水の中でも書ける紙、タトゥーシール、裏から透けないトランプ用の紙が付け合わされており、講義全体を通して紙媒体の可能性の高さを明らかにされました。

創刊から3年間編集長を務める中での感想として、「ファンシーペーパーや特殊な印刷を紹介されても、自分の仕事では使える機会がない」という声があることを紹介され、その対応として「求められた仕様の他に、常にもう一案出し続けることが幅を広げる」と提案されました。また、「媒体の特性を伝えていかなくては、紙媒体は衰退してしまう」として、コストが厳しい中でも特殊印刷を提案し続けることの意義を説かれました。


Session 2:出力・印刷の現場―データを受け取った現場で起こっていること―
スピーカー:村上良日氏、坂口礼治氏(株式会社ケーエスアイ

3月の「大阪DTPの勉強部屋」で好評を博したお二人の講義が名古屋でも実現しました。4回目となる今回の講義はとてもテンポ良く、管理という堅い業務内容やトラブルの紹介をユーモアも交えてプレゼンテーションされました。

内容としては先ずお二人の業務を印刷工程の順に紹介され、出力業務からは、工程のおさらい、出力業務で大変なこと、印刷できる条件、出力業務での作業等が紹介されました。工程管理からは、工程間のコミュニケーションやそれを調整する上での問題、スケジュール管理、用紙・版・インキの仕入れの実際等が紹介されました。

続いて、よくあるデータトラブルとその対処方法を紹介されました。それに関連して、印刷所ごとに違う仕様である「完全データ」という言葉が独り歩きしている問題を指摘し、それに代わる言葉として「完全入稿」という表現が示されました。

まとめとして、「訂正は制作側に戻す清く正しいPDFフローを」「生産管理を担う人を味方に付けよう」「情報を持っている人にはまわりに伝える責任がある。大変だけれども」「コンプライアンスの遵守をしよう」ということが提言されました。

なお、当日使用したスライドを提供していただきました。以下のURLからダウンロードしてください。
https://study-room.info/id/file/018Nagoya_session2.pdf

レポート:的場仁利


セミナーおよび交流会の様子