第41回勉強会

第41回勉強会終了報告

2016年11月5日(土)、「第41回勉強会」が名古屋のウインクあいちで開催されました。今年から内容構成に変化があり、3人のスピーカーがSessionを行う形式になってからの2回目。今回も会場がほぼ満員になるほどの人数が出席していました。
Session 1は、株式会社THINKSNEOの代表取締役として、さまざまな分野のアートディレクションを行いつつ、学校講師やデザイン関連の書籍執筆で活躍されている、大里浩二さんによる配色に関するお話。
Session 2は、株式会社SCREENグラフィックアンドプレシジョンソリューションズで出力関連の開発などを担当している、松久剛さんによる安全な印刷出力に関するお話。
Session 3は、フリーランスのグラフィックデザイナーとして活躍しつつ、書籍の執筆やフリーフォントの配布、動画配信などの活動も精力的に行っている、髙橋としゆきさんによるIllustratorのTipsのお話でした。

Session 1:配色徹底解説〜基本から応用、CMYK・特色・RGBまで〜
スピーカー:大里 浩二 氏株式会社THINKSNEO 代表取締役)


トップバッターの大里さん、表題通り徹底的に配色を語り尽くされたセッションでした。
国によって違う虹の色数の話からはじまり、配色には外せない色相環の種類、トライアド配色などの色相環から色を選ぶパターンや、暖色・寒色に代表される色の感情など、配色の基礎知識について説明がされました。「音楽と同じように楽しんで」と語る大里さんは「音の組み合わせで感情が変わる音楽のように、色も組み合わせで感情が変わります」と持参された鍵盤を叩き、喜びをメジャーコード、悲しみをマイナーコードで例えて披露されました。
それを踏まえ、身の回りにある物の配色とその配色理由を説明。ペットボトルのお茶のパッケージが各社緑色なのは、お茶は緑じゃないと許されない文化的な背景があり、単純に「お茶→ゆったり」としたイメージで緑以外の配色にしても受け入れられ難いこと。また、文化的な背景によるローカライズとして、冷凍食品やポリデントなど海外と日本で配色が全く異なる商品あげられ、青色を美味しそうに思う文化や、売り場面積が広く一面同じ色でインパクトを与えられる文化が配色の理由であることが解説されました。
では、実際に配色を施す場合どうすれば良いのでしょうか。大里さんは「色の感情を使う」「色の力を使う」「同じ色を使う」といった方法を紹介。「同じ色」では、雑誌の紙面で天候の悪い屋外の写真が掲載されたページに、緑色を効果的に使うことで明るく見せている事例をあげられました。また、スーパーで売られているみかんは赤いネットで包まれていますが、これも赤色が美味しそうに熟しているように見せる効果があるからとのこと。まさに色仕掛け、ということです。
配色の基本と施し方がわかった所で、データ上でのCMYK運用へと話は進みます。RGBの画像をPhotoshopにてCMYKに変換する際、モードから「RGB→CMYK」に変換しても適切な色にならない場合があるとのこと。CMYKの設定にも国や印刷機、印刷媒体によって、編集の「プロファイル変換」から最適なものを選ぶ必要があるそうです。特色の印刷では、写真をモノクロにしたい時はグレースケール変換すると同じ調子の色は同化してしまうので、白黒フィルターが最適。さらに、ダブルトーンや、2色分解ついても解説がなされ、5色分解ではプロセス4色+特色蛍光ピンクを使用した例の失敗しない設定方法が紹介されました。RGBの扱いについては、sRGBとAdobeRGBの色相の広さと、それぞれがweb用、印刷用という役割の違いの解説がされました。
そして最後に大里さんは、改めて「音楽を楽しむように、色を楽しんでください」と締めくくられました。配色のお話は奥が深かったのですが、この「音楽と同じ」という言葉で一気に親近感が沸き、理解が深まった参加者も多かったのではないでしょうか。

Session 2:制作と印刷の相互理解で「正しく刷れる」DTPの運用ポイント
スピーカー:松久 剛 氏株式会社SCREENグラフィックアンドプレシジョンソリューションズ GA統轄部 GAソフトウエア開発部)


松久さんは、普段は株式会社SCREENグラフィックアンドプレシジョンソリューションズで、出力に関する開発に携わっており、今回は「ちゃんと刷れる」ためにするべきことについてお話していただきました。
まずは印刷の基本から。インキと光の関係、版を使って印刷されるということ、網点がかけ合わさって色が再現さているということが、これから始まる「正しく刷れる」話の前提として説明されました。
そしてDTPの3大トラブル「白のオーバープリント」「マイターリミット」「自動墨ノセ」について、動きのあるスライドや、デモを交えながらの解説が行われました。「白のオーバープリント」については、根本のオーバープリントの仕組みの解説と、白のオーバープリントが無意識にかかるパターンのデモで再現していただきました。次に「マイターリミット」、Illustratorの線の設定をマイター処理にした時に急角度の線がトゲになる問題についての対応を説明。3つめのトラブルはRIP上で本来間違ってヌキになっているデータを救う処理であるはずの「自動墨ノセ」が逆にトラップになるパターンについて。K100に透明の描画モードを設定してある場合に墨ノセ処理によって意図した結果が得られないというものでした。これに対処するための解決策を2パターン紹介されました。
さらに話はPDF/Xの基礎知識へ。PDF/X-4で透明が使える恩恵、Distillerでは作れないことと、むしろDTPアプリケーションからダイレクトに出力したPDFがそのままRIPに使えること、デバイスに依存しないことが説明されました。
ここで、セッションの合間にトラブルシューティングについての休憩ネタが挟まれ、トラブルの解決を早めるために、再現できる情報報告のポイントが紹介されます。
そして、ページ原点が合ない問題。PDFに目に見えない(Acrobat上では表示できる)トンボ情報を付加すればピッタリと原点を合わせることができるとのこと。Illustratorのアートボードツールで正しく作成することでこのトンボが付加されます。仕上がりサイズでの画像ボックスへの配置や、裁ち落としサイズでのInDesignへの台紙貼りも可。RIPでもこの原点は正確に演算するため、わざわざInDesignに台紙貼りしなくてもIllustratorから出力したPDFでもRIPを通すことができるということでした。
最後に、間違うとトリッキーな特色処理のお話。特色指定をプロセスカラーとして印刷したい場合はRIPで擬似色化を行わずInDesignのインキ管理から「すべての特色をプロセスカラーへ」を指定すること。プロセスカラーなのに特色指定した場合にオーバープリントが透明として処理される事例や、特色に透明が設定されたデータが分割統合された結果、透明がオーバープリントになってしまう事例などを紹介されました。
松久さんのお話は、ところどころに出力の手引webの小さな墨文字にあるようなツッコミや小ネタが挟まれ、詳しく楽しいセッションでした。

Session 3:Illustratorで作るグラフィックデザイン
スピーカー:髙橋 としゆき 氏Graphic Arts Unit


昨年話題となった、Adobe主催のイベント「24時間Illustrator〜愛(Ai)はクリエイティブを救う」において、Illustratorのテクニックを競う「Ai-1グランプリ」で、見事優勝を果たした髙橋さん。まずは自己紹介。フリーのグラフィックデザイナーで、書籍執筆、動画配信やフリーフォント、スクリプトの配布などの幅広い活動をされているとのことでした。そして今回のSessionでは、多機能で幅広い用途に使用できるIllustratorのなかでも、本来の役割である「グラフィック要素」の制作に焦点を当てた内容になるとの説明がありました。内容は「アーチ状のタイトル文字を作る」「パターンを利用する」「部分的に欠けたパーツをつくる」「図形にちょっとした加工をプラスする」「テキスト状態を維持して装飾する」「イラストにアナログ効果を加える」といったメニューが始めに予告され、それぞれの項目について、デモンストレーションを交えながら丁寧に説明されました。同じオブジェクトを作る場合でも、いくつものやり方があり、それぞれのメリット・デメリットを紹介。用途に応じた使い分けのコツなども解説されました。
紹介されたテクニックは、実践的でデザイナー・DTPオペレータに拘わらず、すぐに役立つものばかりでした。基本的に、後から編集がしやすい非破壊での加工方法が多く、修正指示が多い現場に即したテクニックが多いのも印象的でした。そして何より、このセミナーのために新たに制作したという、広告サンプルがとてもセンスよく作られていたので、今回のテクニックを使って真似してみたい気持ちになった方も多かったのではないでしょうか。それぞれのテクニックを駆使しながらも、最終的な入稿データはトラブルの起きにくいデータにするための方法(「透明部分の分割・統合」のコツなど)も紹介されました。
最後のまとめとして、「クリエイティブ(アイデア出しなど)の作業に時間を割くために、データ制作は効率的な方法を」「それぞれの機能を組み合わせながらも、さらにひと工夫しよう」そして「入稿トラブルに注意しよう」とまとめられ、Sessionは終了しました。

レポート:加納 佑輔・吉岡典彦