2016年2月27日(土)、「第39回勉強会」が名古屋の安保ホールにて開催されました。
Session1は、当勉強会の主催者でもあり、InDesignに関する書籍(『InDesign プロフェッショナルの教科書』など)の執筆や、講習などで活動されているYUJIさんの「InDesign、覚えておきたい機能あれこれ」。InDesignの基本から、あまり知られていない機能など幅広い解説でした。
Session2は、多くのメジャー企業のブランディングを手がけているアートディレクター小川明生さん(株式会社ティ・エム・シー代表)による「対話するマークデザイン」。自身が手がけられたCIやロゴマーク・ロゴタイプを例に、ブランディングのプロセスや心がけていることなどをお話いただききました。
ミニセッションでは、川原正隆さん(株式会社ニューキャスト代表)による、InDesignの自動組版や自社サービスに関するお話がありました。

Session 1:InDesign、覚えておきたい機能あれこれ
スピーカー:YUJI 氏InDesignの勉強部屋


まずは、自己紹介としてAdobeサイト内「入門ガイド」や『DTP&印刷スーパーしくみ辞典』の記事執筆、InDesignのイベント「INDD」での登壇予定などを紹介しました。
その後本題に突入。まずは「テキストフレームの基本」として、InDesignで扱う4種類のフレームの説明がありました。そのなかで、テキストを扱う「フレームグリッド」「テキストフレーム」の違いを覚えておく必要があるとのことで、両者の違いや、初心者が戸惑いやすい「グリッド揃え」に関する解説がありました。他にも「ジャスティフィケーションの設定」「フレームグリッド」からの均等詰め設定や、「フレームを内容に合わせる」ボタンなどの小ワザ紹介などがありました。
次に「複製利用」と題して、5種類のオブジェクト複製方法を紹介、基本的な「元の位置にペースト」や「繰り返し複製」の解説ほか、オブジェクト内に入れ子状に複製ができる「選択範囲内にペースト」とその応用としての「角丸の表」を作る方法をデモ。他に、作業効率を上げる上で便利な「スニペット」「ライブラリ」「コンテンツ収集ツール」「CC Libraries」などのそれぞれの特徴を紹介しました。
この他に「画像の配置」に関する便利な機能の数々を紹介。これらの機能は、作業の手順が少なくなり時短につながるので覚えておくと便利。特に「ライブキャプション機能」などは知らない人も多かったのではないでしょうか。
YUJIさんのSessionは、InDesignを少し触った程度の初心者にもわかりやすく、中・上級者であっても知らないままだった機能や、最新バージョンから追加された機能の解説など、幅広い人に役に立つ知識を与えてくれるものだったと思われます。

ミニセッション:

スピーカー:川原 正隆 氏(株式会社ニューキャスト
「まとめて解る! InDesign自動化の全て」と題して、効率のよい自動化の方法を、ゆるい雰囲気のなか「Wordファイルの取り込み」などデモを交えて実演。

Session 2:対話するマークデザイン
スピーカー:小川 明生 氏株式会社ティ・エム・シー 代表)


Session2は、マークのデザインの話題を中心に「ブランディング」に関する深いお話をしていただけました。小川さんが代表する会社の名称“tmc”の由来は「トータル・マーケティング・コミュニケーション」の略であり、単にデザインだけをするのではなく、マーケティングなど、より大きな範囲で仕事がしたい、といった理念からこの名称になったとのことです。
マークやVIと呼ばれるものにおいて大切なことは「一貫性」。つまり広範囲における品質の確保が重要であり、企業でも人でもこれが欠けると信頼性がなくなる。その信頼性を確保するためには、マーク・ロゴの使用規定を細かく決めておき、例外を作らないことが大切であるとのことです。
ブランディングにおける最大の目的は、その企業・団体が目指す理想的なイメージを受け手に正しく伝えることであり、そのために、小川さんの会社では、企業理念の象徴であるCI(コーポレート・アイデンティティ)、企業の戦略的イメージとしてのBI(ブランド・アイデンティティ)、理念を映像化したVI(ビジュアル・アイデンティティ)を構築するといいます。
ブランディングの具体的なプロセスは、まずはクライアントの業界調査から始まり、クライアントの強み・弱点のヒアリング、そのうえで戦略を練って、デザインに落とし込み、そのデザインを発展させてクライアントと共にブランディングを継続させるといった流れです。特に戦略を考える前の段階である調査やヒアリングには時間をかけ、クライアントのトップと話をしたり、企業の歴史・生い立ちや理念、顧客像などを細かく聞き込み、そのうえで「目指す姿」を共有するための「コーポレートメッセージ」と呼ばれる文章を作成します。その文章をもとにデザインを制作することで、より説得力ある強いデザインが作れるということです。
ブランディング概要のお話の後は、小川さんが手がけた具体的な事例を紹介しながら、それぞれどのようなコンセプトでそのデザインを制作したか、というストーリーを語っていただきました。紹介されたマークは中部地区では誰もが一度は見たことのあるもので、完成度が高いだけでなく、そのマークに込められたストーリーが一つ一つの説得力を強くしていることが理解できました。
最後の質問コーナーでは、それぞれの質問に対し丁寧に答える姿が印象的でした。

レポート:加納 佑輔