2015年8月29日(土)、DTPの勉強部屋「第37回勉強会」が、ウインクあいち小ホールにて開催されました。今回は、DTP黎明期から多くのDTP・デザイン関連の講習・執筆活動をされ、大学などでも教鞭を執られている、海津ヨシノリさんをお招きして、Illustrator、Photoshopに関する講習をしていただきました。
ミニセッションでは、松浦正典さんの、新しい印刷システムの見学会の報告と、アドビ システムズ株式会社の岩本崇さんによる、AdobeCCのPRが行われました。
※告知では、海津さんのSessionは前半Photoshop、後半Illustratorとアナウンスされていましたが、当日の都合により順序が逆になりました。

Session 1:粘り強く地道に使い切るIllustrator
スピーカー:海津 ヨシノリ 氏YOSINORI KAIZU WORLD


まず、海津さんは「自分の場合、あまり一般的でない使い方をする」「早く作業を終わらせたい」「効率よくやりたい」という前提を前置きしたうえで、Sessionをはじめました。
最初に「ピタゴラスの定理」の話が始まり、会場に難題(?)を出題するのですが、「意地悪な答え」にびっくり。これは「ソフトウェアを使うときも常に頭を柔らかくしなくてはいけない」という話の例えでした。
具体的なテクニックとしては、「自分なりの配色セットの作り方」「多すぎるパスのアンカーポイントを少なくする方法」「ラスタライズを使用して文字を朽ちたように加工する方法」「低解像度の画像しかない場合の対処法」「マンガの集中線の作成方法」「数珠のつくりかた」などなど、次々と惜しみなく披露していただきました。海津さんのテクニックの特長として、やり方を見せてもらうと「あ、なーんだ」と思えるほどシンプルなのですが、だからこそ「頭を柔らかくする」ことの重要性を再認識させられます。他にも、「塗り・線のない〈透明な〉図形」を使用したテクニックには「なるほど」と思うような発見がありました。
海津さんは、様々なテクニックを紹介しながらも、「同じテクニックを古いバージョンでも再現できるようにしておくこと」の重要性も強調されました。そうすれば、万が一外出先や客先で古いバージョンのIllustrarorで作業しなくてはいけない場合でも対処できるとのことです。このような状況に応じた柔軟な対応力を持つことは、クライアントの満足にもつながるといいます。さらに「わざと遠回りして同じ物を作ってみると新しい発見がある」ということも述べられました。
他に、デザイナーにおすすめのツールとしてColorMunkiの実演紹介もありました。外出先でも手軽に色のサンプリングができるので、クライアントとの打ち合わせに重宝するとのことでした。

ミニセッション:

スピーカー:松浦 正典 氏(株式会社文溪堂
「新しい印刷システムを見学してきました」として、シルクスクリーン印刷でおなじみの大和グランドさんの、印刷機のお披露目会。シルクスクリーン印刷とオフセット印刷の両方の利点を持った、新しい印刷機「SAT」とその印刷の凄さを、写真と実際の印刷物を交えて紹介。

スピーカー:岩本 崇 氏(アドビ システムズ株式会社
各地のDTP系セミナーでおなじみ、アドビの岩本さんによるAdobe Creative Cloudの宣伝。Creative Cloudは単なるソフトウェアの集合ではなく、フォントや素材、ファイル共有などクリエイティブを総合的にサポートする、「環境」ツールとして進化していることをアピール。さらに便利なモバイルアプリなどの紹介もありました。

Session 2:控え目かつ大胆に使い切るPhotoshop
スピーカー:海津 ヨシノリ 氏YOSINORI KAIZU WORLD


Session 2では、まずCamera Rawの便利な使い方を紹介。通常のフォトレタッチにおける色調整はPhotoshopの「トーンカーブ」など「スキルが必要な」ツールを使うことが一般的に多いですが、Camera Rawを使用した方が手軽で完成度の高いレタッチがやりやすい、とデモを交えて説明していただきました。さらにBridgeから画像を直接Camera Raw調整ができたり、PhotoshopからCamera Rawを起動して調整し直すこともできるので、使い勝手がよいとのことです。そしてCamera Raw現像の方が画像が劣化しにくいというメリットがあるということでした。
画像合成において難しい、物体の「影」を作る場合も「スキルが必要な」やりかたではなく、元画像の影を上手く使う方法を実演されました。
人物の顔写真に簡単にデジタルでメイクを施す方法は、一見おおざっぱな作業でありながら、完成した写真は驚くほど自然な仕上がりになりました。
他にも、人物写真において口や目を簡単に水平に補正する方法や、不自然にならない「年配の方のしわ」の消し方、ボリューム不足な「髪の増やし方」など、普段レタッチに苦手意識を持っている人でもできるような、驚くほど手軽なテクニックの連続でした。
人物の写真補正は、レタッチをしているうちに感覚がマヒしてきて、元となる人物とは別人のようになってしまうこともよくあるので、注意が必要とのことでした。そのようなミスを防ぐには、一旦作業を離れて時間をおくか、身近な人に客観的に画像を見てもらうなどの方法が有効であるといいます。

Session 1、Session 2を通して、海津さんが紹介されたテクニックは特別なスキルがなくても、手軽で素早くでき、それでいてプロの品質は確保された技が多く、すぐに試してみたくなった方は多かったと思われます。

レポート:加納 佑輔