2014年最後の勉強会はそれぞれ「実務」と「理念」といった言葉がふさわしい2つのセッションが行われました。
Session1は、先日発売された著書『10倍ラクするIllustrator仕事術 増強改訂版』が好評な、鷹野雅弘さんが「10倍ラクするIllustrator仕事術(2014アップデート)」と題し、最近のIllustratorの便利な新機能の紹介を「角丸」「段組設定」という2つのテーマを中心とした講演をしました。
Session2は、ポップでセンスあるイラストでトヨタやNEC等数々の有名クライアントの仕事をされている、イラストレーターの濱口博文さんによる「デザイナー目線で考えるイラストレーションの現在」。内容は大まかにいえば「デザイナーももっとイラストを描こう。そのために考えるべき事」という趣旨の講演でした。

Session 1:10倍ラクするIllustrator仕事術(2014アップデート)
スピーカー:鷹野 雅弘 氏株式会社スイッチ


当勉強会には、平成21年の第15回以来久しぶりの登壇となった鷹野さん。まずは、IllustratorCCやCC2014のスプラッシュ画面が「夜見ると怖いという人がけっこういる」と言い、来場者の笑いを誘いました。そしてスプラッシュ画面の変更ができるという解説から続いて、「文字のルビの付け方」「InDesign的な画像配置」「手軽になったマスク機能」などの、最近のIllustratorでできる便利な小技を紹介されました。その後、Sessionは本編へ。「角丸」と「段組設定」を大きなテーマとして、後から編集しやすい角丸四角形や、四角形の面取りなどの作り方を解説、数値が割りきれない四角形を簡単に三分割する方法、1分間でカレンダーを作る方法など、実践的で簡単にできるTipsを時間の許す限り紹介されました。『10倍ラクするIllustrator仕事術 増刷改訂版』にも載っていない話も多く、本を既に買っていた人にも十分に満足のいく内容でした。鷹野さんは全国各地でセミナーを開催されているだけあり、話のテンポが非常に良く、飽きさせない構成で70分という時間の長さをまったく感じさせないSessionとなりました。さらに後日、受講者だけに今回使用したサンプルデータのダウンロードリンクなどを含む、フォローアップメールが送信されるといったうれしいアフターフォローもありました。

プチセッション:

今回は4名の方からご発表いただきました。

スピーカー:柴田 勉 氏(株式会社ノア
ご当地キャラクター「おけわんこ」の、DTP従事者ならではの関わり方を紹介。

スピーカー:ひなた 氏 (@hinatakobo
Illustratorで、指定サイズピッタリにグラフを生成する方法を紹介。

スピーカー:加納 佑輔(日本語デザイン研究会株式会社そうさす
大阪で開催された「書体の誕生」展の様子をレポート。

スピーカー:森 裕司 氏(InDesignの勉強部屋
源ノ角ゴシックのダウンロード・インストール方法と、Illustrator CC 2014のタブレットバージョンを紹介。

Session 2:デザイナー目線で考えるイラストレーションの現在
スピーカー:濱口博文氏Hama-House Illustrations


元はデザイナーをしていたという濱口さん。まずは自己紹介として最近の主な仕事をピックアップ。LINEスタンプやキャラクターCMなど有名クライアントの案件を紹介されました。そのなかで、「これはデザインなのかイラストレーションなのか」という問題提起として、ピクトグラム風のもの、アイコン風の線画を提示。ピクトグラムやアイコンのようなものであればデザイナーでも描ける、さらにレイアウトが完全に決まった状態で描くイラストレーションはデザインとも言える、として、濱口さんは「デザイナーもイラストを描こう」と提案されました。
濱口さんは元々デザイナーをされていたのですが、「デザインの上手い後輩を見て「このままではヤバイ」と思った」と言い、生き残るためにはイラストも描かないといけないと思ったそうです。そして、自分のデザイン案件に自作イラストを少しずつ使用して、徐々にイラストの比重を増やすことで「イラストレーションの人」という周囲からの印象を作り上げていったと言います。それから独立して仕事を得るための自分なりの方法や、デザイナー出身者が描きやすいイラストのコツなど、自身のノウハウを惜しみなく披露してくれました。生き残るためには何をすれば良いか、他が出来ないことで何がでいるか、成功しているデザイナー・イラストレーターは、常にこの問題に向き合っていると痛感させられる非常に意義のあるSessionでした。

レポート:加納 佑輔(日本語デザイン研究会株式会社そうさす