平成26年(2014年)5月17日(土)、DTPの勉強部屋「第32回勉強会」が、安保ホールにて開催されました。今回は、全編組版の内容で開催いたしました。
大阪より、「大阪DTPの勉強部屋」を主宰され、2013年9月に発売された『神速InDesign』の共著者である宮地知さんと、『+DESIGNING』誌で「おぢんの文字組み手帖」を連載される大石十三夫さんのお二人を迎え「文字を組む」と題して、全国的に盛り上がりを見せる「組版」について、4時間連続の1セッションで開催いたしました。

Session:文字を組む
スピーカー:大石 十三夫 氏なんでやねんDTP
スピーカー:宮地 知 氏大阪DTPの勉強部屋WORK STAIONえむ

前半:パソコンを使う前に考えてみるコト


「文字を組む」4時間セミナーは、宮地知さんのEQ寄りのお話で始まりました。
「長い文章を読みやすく組むにはどうすればよいのかということに絞って話を進める」とし、先ず「箱組」について触れられました。「活版や手動写植時代は、勝手にジャスティファイがかかるのではなく、計算と手作業で行われ、それぞれの文字種の組版上の意味も決められていた。このような知識を現在に受け継いで欲しい」と述べられました。また、「長文の組版を手動で行うことは現実的でなく、流し込みで理想の組版を目指すことが基本である」とされ、これを実現するために「文字組みアキ量設定」「禁則調整方式」等のカスタマイズが必要であるとされました。
次に、良い組版とは何かということに触れ、「良い組版とは仕事の内容によって異なるが、『なんとなく』ではダメ」「人それぞれだが、自分なりに組むためのルールを確立するために、自分の考えを明確に持つことから始めよう」と述べられました。
「印刷物は工業製品の側面があり、一定の品質を維持する必要がある。感覚だけで作ってはいけない」として、「強い禁則」「行末約物半角」等の使うべきではないプリセットの紹介と、「文字組アキ量設定」活用をおすすめされました。また、本編が良かったのにパンフレットの組版が残念だった作品として、映画「舟を編む」の事例を紹介されました。字間や句読点の位置が不安定な読みにくい長文であったとし、「デザイナーの間でこういうものがはやるとイヤだなぁ」と述べられ、「良い組版の認識を共有するきっかけにこの話がなるといい」と結ばれました。

後半:JISとInDesignプリセット(デフォルト)


後半は、大石十三夫さんによる組版のIQに関するお話になりました。
「とりあえずデフォルトで! ということは止めて、どのような仕組みで動いているのかを知って、そこから自分はどうしたいのか考えてやろう」とされ、先ず大石さんが先に行われたアンケートを基に、「ベタ組み」について考えました。
アンケート結果ではある程度空きを調整したものが「ベタ組み」であるという回答が多くを占めた一方、大石さんの写植の経験からは約物も全角取りで調整しないことが「ベタ組み」と認識していたとされました(「ベタ組み」を調整をして行として組み上げるということ)。各現場で認識が共有されており齟齬がなければ問題はないとされましたが、Adobeのアプリケーションを使う場合には、これらが準拠するJIS X 4051の定義「ベタ=アキなし」として設定を考える必要があるとされました。
続いて、『日本語文書の組版方法』(JIS X4051)と『日本語組版処理の要件』を紹介され、この中で規定されている内容とInDesignのデフォルト設定との関係について考えました。
InDesignの行頭括弧の扱い、分離禁止の文字列、行の調整処理等々の振る舞いを点検し、InDesignのJISに準拠しているところと準拠していないところを明らかにされました。
話はさらに進み、JIS X 4051の規定とInDesignのプリセットの違い、設定変更の要点へ。ここでは先ず「InDesignに14個もある文字組みアキ量設定はいらない」として環境設定でこれらのデフォルトを隠す方法を紹介されました。さらに「文字組みアキ量設定は自分なりに変えることが基本」として、パネルを細かく見ながら、その設定方法を解説され、中黒等に調整が集中させない考え方と、その設定の作り方を披露されました。

大石十三夫氏作「文字組みアキ量設定」ファイルダウンロードページ

レポート:加納佑輔的場仁利