2014年2月22日(土)、DTPの勉強部屋「第31回勉強会」が、ウインクあいち小ホールにて開催されました。今回は、Adobe InDesignの時短テクニックとグラフィックデザインの2つのテーマで開催いたしました。
Session 1では、当勉強会の会長であり、DTP解説書の執筆、トレードショーでの技術セミナーのオーガナイズ、ウェブサイト「InDesignの勉強部屋」の運営等をされているYUJIさんから「InDesign、覚えておきたい時短テクニック」として、Adobe InDesignの「時短」につながる様々なテクニックを紹介いただきました。
Session 2では、当勉強会の第29回にご登壇いただき好評だった、アートディレクターで大学で教鞭も執られているカイシトモヤさんに再びご登壇いただき、2014年3月24日刊行予定の書籍と同名の「How to Design」という演題で、グラフィックデザインの実際を前回よりもさらに踏み込んでご紹介いただきました。


Session 1:InDesign、覚えておきたい時短テクニック
スピーカー:YUJI氏InDesignの勉強部屋


Session 1は、ウェブサイト「InDesignの勉強部屋」や本勉強会を主宰しているYUJIさんが、「InDesign、覚えておきたい時短テクニック」として、「時短」につながる様々なテクニックを紹介されました。
まず環境設定関連のテクニックとして、「アプリケーションデフォルト」を紹介されました。アプリケーションデフォルトとは、ドキュメントを何も開いていない状態で環境設定を行うとそれ以降の新規ドキュメントの初期設定ができるというもので、「とても便利なので是非設定しておいて」と紹介されました。他には、環境設定を書き出し←→読み込みによる設定の同期、inddファイルのアイコンが保存バージョンで表示されるフリーソフト「InDesign Glee」(ものかのさん作)を紹介されました。
次に基本操作関連のテクニックとして、様々なショートカットを紹介されました。文字パネルを表示する「Ctrl+T/Command+T」、選択ツールでオブジェクトとテキストの対象を切り替える「J」、線に色をつける場合の「X」、色をなしにする場合の「/」等を紹介されました。他には、選択ツール、用意されていないショートカットが設定できるキーボードショートカットを紹介されました。ガイドの引き方としては、見開きにまたがる引き方、縦横同時に引く方法、等間隔に引く方法、オブジェクトに合わせて引く方法が披露されました。
続いてペーストや収集関連のテクニックとして、「Ctrl+C、V/Command+C、V」等のペーストの基本を解説されました。他には、選択範囲内にペーストによる角丸の表の作り方、ドキュメントの外にドラッグすることでInDesignの部品が作成できるスニペット、パーツ類を登録できるライブラリ、Illustratorのシンボルのように共通の部品をリンクして使うコンテンツ収集ツールを紹介されました。
組版関連のテクニックとしては、訂正時にテキストフレームが二重になる等でドキュメントを作り直す必要があったものを回避できるプライマリテキストフレームから紹介されました。他には、見出しまわりを時短できる段落境界線の使い方いろいろ、テキストフレームの自動調整、特殊文字を利用したインデントを紹介されました。
最後に優良な無料スクリプトとして、選択文字の中の数字を丸数字にする「round_num」と、二桁数字を半角や3分にする「num_glyph」(2点ともShowTime+one、せうぞーさん作)等々が紹介されました。
「ひと手間減らすだけでも大きく効率化できますので、持ち帰って使ってみてください!」と締めくくられました。

プチセッション:

今回は4名の方からご発表いただきました。

スピーカー:松下寛子氏(日本語デザイン研究会|中部etohon
アーティストで豆本作家の松下寛子(hokori)さんが、参加するグループで制作された作品『なの帳.世界一小さい日本語書体見本帳』を紹介されました。作品を写真で見せながら、2014年2月15日に「もじもじカフェ」のワークショップで初お披露目し、この夏に組継ぎ本とフォントが学べる勉強会を開くという計画を紹介。グループの「名古屋の文字好きが集まるためのサークル」という趣旨と、メンバーの募集を告知されました。
組継ぎ豆本『なの帳』作りました

スピーカー:今関洋一氏(blue-screeeeeeen.net
『神速InDesign』の共著者の今関洋一さんが、「InDesignで使える、長体平体をリセットするショートカット」を紹介されました。長体・平体・ベースラインシフト等を解除することを、自作されたスクリプトとそれをショートカットに割り当てることによりInDesignで実現するもので、その使用方法も解説されました。スクリプトが公開されている自身のサイトを紹介する場面では、「サイト名のeは7つです」「検索はDTP Blueで!」と会場を和ませました。
【InDesign】選択文字列の長体平体をリセットするスクリプト→ショートカット

スピーカー:五十嵐華子氏(ham factory
新刊『神速Ilustrator』の共著者の五十嵐華子さんが、「カラーの神速『オブジェクトの再配色を使いこなし』」と題して発表されました。通常のカラーパネルを使うと2回作業が必要な塗り、線、文字の色変更が一括でできる「オブジェクトの再配色」を紹介。「ハーモニーカラーをリンク」のチェックや、切りのいい数値にも調整できること等をデモされました。『神速Illustrator』には「このように便利な80のテクが載っています!」と結ばれました。

スピーカー:松浦正典氏(株式会社文溪堂
地元羽島市を本社に、学校教材の出版を行う文溪堂で制作のコーディネートをされている松浦正典さんが、「5分で振り返るDTPの勉強部屋30回の歴史」と題して発表されました。当勉強会の30回越えを記念して、第一回から30回までの全ての回の概要をまとめた動画を制作していただきました。思い出の場面がソチオリンピックのテーマ曲とともに上映され、会場は感動に包まれました。

Session 2:How to Design
スピーカー:カイシトモヤ氏room-composite代表、アートディレクター/グラフィックデザイナー)


Session 2は、昨年の第29回勉強会「グラフィックデザインのツボおし」も好評だった、カイシトモヤ氏のセッション。カイシ氏は、一流のデザイナーの手癖や感覚を意識的に言語化することで、「センス」や「考え方」を論理的にわかりやすく説明してくれます。
今回のセッションは、それらのノウハウを若いデザイナー向けてわかりやすく解説した『How to Design.いちばん面白いデザインの教科書』(MdN刊3月24日発売)がついに完成したということで、この本のダイジェスト的な内容として、今回初出しの情報多数の見どころのあるセッションとなりました。
まず、簡単な自己紹介の後、本を書くに至った理由を説明。これまで自身がデザイン関連の書籍を多数読み込んでいくなかで感じたこととして、ほとんどの本は「デザイン思想・哲学の本」か「アプリケーションのリファレンス本」に分類され、これらは「思考」と「身体性」どちらかのみを扱っていると解説。しかし、カイシ氏は「思考」と「身体性」を「つなぐ本」がないので、これを自分で書きたいと思ったとのこと。ここから『How to Design…』の具体的な紹介に入りました。

デザイナーの力には「5つのカテゴリ」があると解説。それは、1)発想力、2)造形力、3)美的判断力、4)情報力、5)コミュニケーション力であり、自分が得意な能力を知ることが重要とのこと。そのうえで、欠けている部分を克服したり外部との連携によって補ったりすることでよりよい仕事ができると解説。これからのデザイナーは「得意なこと」だけでなく「できないこと」も知っておく必要があるのではないか、と述べられました。

その後、本の内容にそって各章ごとの内容を解説。「形」「色」「文字」「写真」「レイアウト」「印刷」をテーマごとにそれぞれ「どのように考え」「アプリケーションでどのように実現するか」をわかりやすく説明されました。「配色は〈対比の緊張感〉か〈調和の安心感〉」「タイポグラフィーは気配り」「撮影依頼するときは、撮り方よりも何を伝えたいかを伝える」「レイアウトはグラフィックデザインの本質であり、関連性のデザイン」「デザインを崩すときは、揃えてから」等、実績・経験豊かなデザイナーならではの示唆に富んだ言葉が次々と飛び出し、会場を沸かせました。

レポート:加納佑輔的場仁利