今回のDTPの勉強部屋は、Session 1に横浜でグラフィックデザインやライターをされる伊達千代さんと、Session 2に東京で広告のグラフィックのデジタルレタッチをされている北岡弘至さんをお迎えして開催しました。

Session 1:デザインに説得力を持たせるには
スピーカー:伊達千代氏(株式会社TART DESIGN OFFICE)


デザインに関する著作を多数執筆されている、横浜在住のデザイナー伊達千代さんがグラフィックデザインビジネスにおけるマネージメントについての発表をされました。
周囲のデザイナーにヒアリングしたところ「10年前と比較してデザイン料金・納期ともに減り、フリーのデザイナーにとっては厳しい状況となっている」「電通調べによると広告媒体の種類が増え、新聞や雑誌といった旧来の媒体が占める割合は減っている」とし、このような状況でいくつかのデザイナーの取り組みを取材し、紹介されました。
テーマを絞りこだわりのデザインを提供しているデザイナーを例に挙げ、「他の人がやらない(やれない)物に特化したデザインを追求し、コアな需要に応える」のもひとつの方法であるとされました。また、「セールススタイルのマトリクス区分」を参考に、「グラフィックデザインの世界でもお客様にソリューションを提供する姿勢が必要な時期に来ている」とグラフィックデザインビジネスの在り方を再定義する必要性を提起されました。
当勉強会では珍しい試みとして、会場の聴講者を二人一組にし、聞き手と話し手に別れて「仕事の状況」「それをどう相手が評価しているか」「今後どうなっていくか」「出てきた話をまとめる」という実習を行いました。
これを通して伊達さんは、まずは相手の話を受け止めることが大切であるとし、相手の気持ちを知ることは決してデザインと無関係ではないと説明されました。
お客は制作物そのものでない部分についてデザイナーに求めることが多く、それに応える技能の中心が「ヒアリング」であると述べられました。そして、その内容を分析し、クライアントの問題を解決する一助となり得るデザインを提供することが大切であるとされました。
また、自分の製品のセールスポイントを説明できるのは当然のこととした上で、横のつながりを大切にし、他者の優れたデザインに触れて分析し、記録する習慣の大切さも訴えられました。

プチセッション:

今回は4名の方から発表がありました。

スピーカー:渡邊和仁氏株式会社オーエスティー
第3回、第10回勉強会で講演いただいた渡邊さんがプチセッションに登壇されました。「Photoshop CS5では、新機能でない機能も進歩している」として、レンズ補正、ワープを始め、Photoshop CS5の機能を使った画像編集のTIPSを披露されました。

スピーカー:神澤有希恵氏(画家・ウェブデザイナー)
DTPユーザー向けに、WEBとDTPの違いについてのお話しをされました。WEBにおけるブラウザやOSによる再現の違い、DTPとWEBの制作目的の違い等に触れられ、「WEBでは見栄えや見やすさも必要だが、使いやすさも必須である」と述べられました。

スピーカー:阿部浩之氏株式会社デジックス
制作者のためのユニバーサルデザインを目指したプラグインソフト製品、「aiPDF」「飾り罫for InDesign」「あふれfor InDesign」が紹介されました。

スピーカー:加納佑輔氏(グラフィックデザイナー)
一般的なWEBページは「文字が読みづらく、紙のデザインと比べるとつまらない」とし、「それで終わらせて良いのか」という問題提起をされました。
WEBデザインを紙媒体のデザインに応用させるのは難しいが、逆は容易であるとし、紙媒体経験者が積極的にWEB業界に参入すべきとし、そのための手法の一端をデモンストレーションされました。

Session 2:イメージをかたちにする! Photoshopでのレタッチワーク
スピーカー:北岡弘至氏(GARABATO


Session 2では、映画や広告グラフィックのビジュアル制作をされているフォトレタッチャーの北岡氏にその制作過程をご披露いただきました。
Photoshopの新機能を追うことはしないため「定石にない作り方をしているかもしれない」とされた上で、制作当時のエピソードも交えて丁寧にデモされました。
俳優の僅かなスケジュールの合間を縫った撮影の工夫、合成ではなくご自身で実物を作ったもの、3Dソフトを使わず100%レタッチで制作した立体ロゴ、デジタル撮影ではなくあえてプリントからスキャニングした作品……等々、第一線の技が紹介されました。

レポート:壱岐孝平的場仁利